かふんしょー

「ヘッ、ヘッ、ヘークション!」


そのくしゃみでアライさんは振り向いた。


「大丈夫なのか~?フェネック?」


「スッ...、大丈夫だよ、アライさん...、ズズッ」


鼻を啜る音を混じらせながら言った。


「やっぱ心配なのだ・・・。一緒に図書館に行って調べるのだ」


「ゴメンね...。心配かけちゃっ、ヘクション!ああっ...」






「ああっ...」


目がかゆい。

何度も何度も片手で目を擦る。


「大丈夫かばんちゃん?」


サーバルは何食わぬ顔で尋ねる。


「目が痒くて...」


「なんかの病気なのかな・・・?博士さんに聞いてみようよ」


幸いにも、ここは図書館の近くの森だ。


「そうだね・・・」


そう言ってその案に乗っかる。

図書館に向かう事にした。






「博士っ!助手!大変なのだ!!」


大声で叫ぶ。


「うるさいですね」


「図書館では静かにって、鉄則ですよ」


嫌々出てきた博士と助手に、アライさんは状況を説明した。


「フェネックがさっきから、くしゃみばっかりして大変なのだ」


「はい?」


「どういうことですか?」


二人もイマイチ理解していない様子だった。


「こ、こういう事だよ・・・、へックション!

なんか目も痒くなってきたし・・・、あーもうやだ・・・」


その様子を見て博士も何となく理解した様子だった。


「なんか辛そうですね・・・。助手調べるのです」


「わかりました・・・。博士」



「博士~、いる?」


すると後ろからサーバルがやってくる。


「どうしたのだ?サーバル」


「あっ、アライさん!それが、かばんちゃんがね・・・」



「あっ・・・、かゆっ・・・」


再びかばんは片手で目を擦った。


「何なのです、あなたもですか」


博士はかばんの様子を見てそう言った。


「あ、あなたもって?」


僕は聞き返した。


「実は・・・」


「かばんさん・・・?」


目を同じように擦るフェネックがいた。


「もしかして、フェネックさんも・・・?」


「なんか、鼻が詰まっててさ・・・、目も痒いし・・・」


「まあ、二人とも待つのです。我々が調べますから」


助手の言葉で僕たちは待つことにした。



「ハーックション!」


「うぇっくしょん!」


タイミングよく二人はくしゃみをする。



「まだわかんないのだ・・・?」


アライさんは苛立ちを覚えていた。


「かばんちゃん大丈夫かなぁ...」



『カバン、ティッシュヲ、モッテキテ、アゲヨウカ』


「何かわかりませんけど・・・、とりあえず」



ラッキービーストが頭の上に箱を乗せて来た。

僕はそれを受け取る。


「この白い薄い紙は・・・」


暫くそのものを見て、一つのやり方を思いついた。


ズズッーッ


鼻をかんだ。

少し楽になった。


「なにそれ・・・」


「ティッシュで鼻をかめば楽になりますよ」


僕はフェネックにそう伝えた。


「そう・・・?」


(でも“かむ”ってどうするんだろ・・・)


色々工夫する。

しかし、よくわからない。


「かばんさぁん・・・」


鼻声でそう言う。


「どうしたんですか、フェネックさん・・・」


「・・・やりかたがわからない」



フェネックがそんな事を言うのは珍しかった。



僕はティッシュを取ってフェネックの顔に近付いた。





「二人とも、わかったのです」


「原因がわかったですよ」



「なんなの?」


サーバルは二人の話に耳を傾けた。



「花粉症なのです」


博士はそう断言した。


「植物からでる“花粉”というモノに、

一部の人物の体が悪い反応を示すそうです」


助手が解説した。



「治るのだ・・・?」


アライさんは尋ねた。


「植物の花粉が飛ばなくなるのを待つしかないのです」


「それにあなた達も、花粉を持ち込んでる可能性があるので、

二人のいる部屋にはいかない方がいいかと・・・」


「そうなの・・・、かばんちゃん大丈夫かな・・・」











「ハァ・・・、ハァ・・・、かばんさん・・・」


「フェネックさん・・・、あっ・・・」


二人の傍らには山積みの丸められたティッシュ


「僕たち花粉症みたいですね・・・」


「鼻がムズムズする・・・」


「また、かんであげますから・・・」




「「花粉症って辛い・・・!!」」

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