とんでもないことに気づいてしまった博士

博「助手」


助「何ですか?博士」


博「我々は気付いてしまったのです...」


助「何をですか?」


博「我々は“ヒトのいいように使われている”という事なのです!!」


助「何言ってるんですか。ヒトは絶滅しましたよ」


博「そんな“せってい”に惑わされてはいけないのです!助手!実質我々の見えない所にいるだけなのです!!」


助「...、どういうことか聞かせてくださいよ」


博「いいですか?我々は“けものフレンズ”という“アニメ”に出てくる“きゃらくたー”、つまり、“人形”にしかすぎないのですよ!」


助「ほう」


博「よくよく考えて見てください。

我々は今まで何をしましたか?」


助「かばんに何のフレンズか教えて

作ったカレーを食べてセルリアンを倒したのです」


博「違うのです!確かにそれもしましたが、我々は“人形”なので、勝手に能力を付け加えられたり、悪役にされたり、

電車を運転させられたり、やらしい事をされたりしてるのですよ!」


助「私は記憶が無いですけどね」


博「いいですか?我々の使命を思い出すのです。我々は賢い島の長の動物としている事が絶対なのです。

何故それなのに“ヒト”に別のことをさせられなきゃいけないのですか!

我々を“人形”扱いしないで欲しいのです!」


助「それは無理ですよ」


博「何故です」


助「我々はどう足掻いても“ヒト”の良いようにしかならない“人形”のままです。生まれた時から“人形”ですから」


博「はい?流石の私でも意味がわからないのです」


助「自分の姿を思い浮かべてください」


博「はぁ...」


助「その姿は“誰”が作ったのですか?」


博「サンドスターです」


助「サンドスターは誰が作りました?」


博「火山です」


助「では、火山のあるパークを作ったのは?」


博「...ヒトです」


助「博士、ヒトが生まれてなければ我々は今ここに存在しないのです。

良いように使うからと駄々をこねず、

感謝すべきではないですか?」


博「助手はヒトの“人形”でも良いのですか?」


助「私はそれでも良いと思います」


博「確かに、ヒトに恩義はありますが...」


助「我々は“人形”になることでヒトに

お礼出来るのです。

例えばここで私と博士が全裸になって

いろいろやり合うという“せってい”にしましょう」


博「えぇ...(困惑)」


助「一部のヒトはそれを百合と言い、

尊いと思い、快感を得るのです」


博「そ、そうなんですか...

変な人たちなのです...」


助「我々はそうやって人間の為に尽くすのがいわば仕事なのです。

ご納得しましたか?」


博「結局、我々は“人形”のまま

扱われるのですね...」


助「納得行かないのですか?」


博「腑に落ちないですね」


助「我々を“人形”として扱う人間を減らすことは出来ますよ」


博「何なのです?それは」


助「簡単です。“こてーがいねん”を

崩壊させるのです」


博「???」


助「例えば博士、この文字は【あ】と

読みますよね?」


博「そうですね」


助「では、お偉いさんが今日から【あ】は【い】と読んでください。

ルールを破ったら処刑します。と言いましょう。どう思いますか?」


博「なんですか。ふざけんなって思いますね」


助「ですよね?

何故そう思ったのですか?」


博「だって【あ】は【あ】って読むのが当たり前だからです」


助「仰る通りです。

ヒトは当たり前と思っている事を崩されると不快な思いをします」


博「それを利用するのですか?」


助「そうです。

ヒトが抱く、“けものフレンズ”イコールの物を別の物に変えるのです」


博「何を変えるのです」


助「【けものフレンズ】イコール【たつき監督】これを、例えばイコール【宮崎駿】にしてみましょう」


博「(だ、誰なのです?)」


助「画面の前のみなさんは

“宮崎駿のけものフレンズ”を想像してください」


博「んー...」


助「どうですか?

なんとなく予想が付かない...

あんま納得行かない方が多いかもしれません。それは、けものフレンズはたつき監督の作品だ。という固定概念がそういった違和感を引き起こしているのです」


博「ほう...、固定概念...、興味深いのです」


助「もうひとつ例をあげてみましょう。我々の声をかばんとサーバルに変えて脳内再生をしてみてください」


博「なんかこれじゃない感が凄いですね」


助「そうでしょう?固定概念の持つ力は半端ないのです」


博「んー、ですが、けものフレンズを知らない人に宮崎駿版けものフレンズとか

我々の声がかばんとサーバルのを見せたらそれが“当たり前”だと思うのでは?」


助「流石私の博士、賢いです」


博「照れるのです...」


助「そう。ヒトが【あ】を【あ】と読むのはそれが当たり前になっているからです。【あ】をなんて読むかわからない

ヒトに【あ】は【い】と読むと教えれば、【あ】を【い】と読むでしょう。

ですが、ヒトにはある弱点があるのです」


博「弱点?」


助「じゃあ博士、

博士が【あ】を【い】と読むとして

私が【あ】を【あ】と読みましょう

私からして見れば【あ】を【い】と読む博士は変人です」


博「そうですね。でも、私からして見ても【あ】を【い】と読む助手は変人なのです」


助「では、もう一人増やしましょう。

ここにかばんが来たとして、かばんは【あ】を【あ】と読みます。

これで2対1になりました。

博士、どう思いますか?」


博「なんか、【あ】を【い】と呼んでる自分が馬鹿馬鹿しいのです」


助「それがヒトの弱点です」


博「おお...」


助「先程言ったように『けもフレは宮崎駿の作品だ』と思っているヒトに対し、大人数が『バカ、けもフレはたつき監督の作品だ』と言えば...?」


博「きっとその1人は『けもフレはたつき監督の作品なんだ』と納得するかもしれませんね」


助「差はあるかもしれませんが、

固定概念の弱点は多数意見に上書きされやすいんですよ」


博「なるほど...、勉強になるのです」


助「この固定概念の書き換えは現実世界で常に起こっています。スマートフォンとかがわかりやすい例ですね。10年前、スマートフォンを自分が手にすると思ってましたか?

それは、“スマートフォンを持っているのが当たり前”というように固定概念が無意識のうちに変わったのです」


博「無意識のうちにですか...、ちょっと怖いですね...」


助「ええ。話が逸れましたが、結論は

固定概念を崩壊させる事によってヒトを不快に思わせ、我々の“人形”扱いを少なく出来るのです」


博「すごくタメになったのです。

助手は賢くなったですね」


助「いえいえ。で、博士は“ヒト”に感謝しますか?」


博「まあ...、その方が良さそうですね。我々のことを必要としているなら。今は画面の向こうで実際の“ヒト”

とは接触出来ませんが、いつか触れ合える時代が来れば良いですね」


助「VRの技術が発達すれば、可能になると思いますよ。ヒトが作ったジャパリパークにヒトが来ることもできますしね。我々に“触れている”ということも実感出来るかもしれません」


博「難しい単語を使いますね...

最近よく聞く、意識高い系キャラに...」


助「なんでもいいですよ。

さて、どうしますか博士。

ヒトに癒しでも与えてやりますか?」


博「な、なんでいきなり服を脱ぎ始めてるのですか...?」


助「元々、ワシミミズクは猛禽類で力も強い。肉食系という“せってい”が似合うんじゃないですか...?」


博「はぁ...、しかたないですね」


助「嫌ですか?」


博「そんなことないですよ...

私は肉食系の彼女に振り回される彼女、

そういう“せってい”で」


助「なるほど。

そうして“にじそうさく”作られるのですね」


博「何ですか?“にじそうさく”って」


助「...また、次の機会に一緒に勉強しましょう」


博「そうですね」


助「さーて、コノハちゃん...

食べちゃいますよー」


博「食べないでくださーい」


助(あれ、かばんの声が・・・)


...END

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