2/15日(金)初体験は突然に

「さゆりさん……ゴハァ」

「健ちゃん、大丈夫?これ飲んでちょっと寝ててね。私、戦うからね? 大丈夫。私は、私達を割こうという人達を排除するから」


 宮崎さゆりは半狂乱になったようにまくしたてて、バックから何かを取り出して西城健に強引に飲ませた。すると、西城健は糸が切れたかのように眠ってしまった。


「それがお前の本性か?」

「ちょっと、宮崎さん! 何飲ませたの!?」

「うっさいわねぇ!睡眠薬よ! 健ちゃんに怖いとこ見せられるわけいかないじゃない!」


 怖いとこねぇ。本性を見せられないの間違いじゃねぇの?まぁ、どうでもいいわ。


「で、どうすんの? カマイタチに返すの? 返すよな?じゃねぇとお前、終わりだぞ」

「あんたに私の気持ち分かるの? 分かるわけないわよね」


 そう言って、宮崎さゆりは立ち上がり、俺の顔を片手で掴んだ。


「デンジャラスとかいっちゃう自己中なガキが、女の気持ちなんて分かるわけないわよね」

「離せ!」

「離せ?嬉しいんじゃないの?女に触られるなんて人生で初めてでしょう?この童貞が」

「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!!」

「焦ってんじゃん。ねぇ?スゲー焦ってんじゃん、あんた。超ウケるんですけど!」


 宮崎さゆりは、俺をバカにした笑い声を上げる。グーか?グーで殴っていいのか? 男女平等というなら殴るべきだな。よし、殴ろう。


「見逃してくれたら、あんたのイカくさい初めて食ってあげてもいいわよ」

「―――えっ?」

「止めろ宮崎さん! あんた、そんなんでいいのかよ!」


 えっ?兄ちゃんなんで止めちゃってくれてん?同人誌とか、なろう系とかみてねーの?


 この流れは、西城建の目の前でNTRじゃん?


 そうすりゃ、西城建は失望でカマイタチのとこ帰るし、依頼達成で報酬ゲットできるしで、俺も……


「自分でも分かってるだろ!こんなのいつか終わるって! やったことに向き合わなきゃダメだって!分かってんだろ!」

「うるさいわね!黙ってなさいよ!」


 そうよ!黙ってなさいよ!半端な自主性を出すんじゃないわよ!


「……さゆりさんを責めないで下さい。悪いのは僕なんです」


 あんたも黙ってなさいよ!なんで目覚めてんのよ!


「健ちゃん!なんで!?」

「ゴメン、さゆりさん。僕、慣れちゃったのかな?。もうあんまり効かないみたい。探偵さんでいいんですか? 悪いのは僕なんです」

「あーあー。もういいよ。はいはい。悪いのは君なのね。はいはい。語って語って。好きにやっちゃってよもう」

「晃司、なんでそんなになげやりなの? こっからいい感じのシーンになるじゃん? ねぇ、なんで?」

「うるせぇよ。役立たず。いらねえ自主性だすんじゃねぇよ」

「なんで俺にキレてんの!?ねぇ、なんで!?」


 黙れ能無し。空気読めねぇから、信金クビになんだよ。


「……あの、あんまり興味ない感じですか?」

「あんたたち!健ちゃんに気を使わせんじゃないわよ!」

「あーはいはい。語ってどーぞー」


 マジ帰りたい。もういいや、家賃とか。兄ちゃんがなんとかすりゃいいんだ。


「はぁ、なんか微妙な感じですが……悪いのは僕なんです。僕がさゆりさんにお願いしたんです」

「健ちゃんは悪くない!」

「いいんだ。僕が悪いんだよ……探偵さん。僕がお願いしたんです。連れ出してくれって」


 はい?何いってんのこの子は?止めろよ。そんなシリアスいらねぇんだよ。


「詳しく話してよ」


 おい愚兄。乗っかんなよ。あーあー。どいつもこいつもマジ顔しやがって。 そんな空気になっちまったじゃねぇか。


「おい……宮崎。大丈夫か?なんか喧嘩してねぇか?それとも、第2幕の前戯か? 行こうか?」


 安定しておかしなお隣さんに癒される。変態に癒される経験なんて初めてだ……でも来んな。

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