2/13日(火)赤スキンちゃんで殴っとけば良かった

晃司の奴、いかに俺らがヤバイかやっと分かってくれたようだ。


「兄ちゃん、出来たの頂戴!」

刷り終わったチラシを抱えては、新聞配達のように撒きに行く。朝、昼、晩と撒くんだって意気込んでいる。


実に嬉しい。あいつがやる気になっているは、成人してから見たことがない。



最後にやる気出してたのはいつだっけ?あぁ、高校最後の文化祭で、あいつが芝居の演出と脚本を手掛けたときか。


あのときは、栄養ドリンク片手にどうすれば面白い話になるか、文化祭当日まで悩んでたっけ。


演者への指導と終えて、帰って脚本とコンテを見直して悩むあいつの姿を見て、創作者としての大成を確信したもんだ。


文化祭前夜、出来上がった芝居を是非見て欲しいって言われたっけなぁ。


赤ずきんちゃんをモチーフにしたラブロマンスって説明に興味が湧いて、大学の講義サボって見に行ったんだよ。



そしたら開演10秒で、赤いコンドームを被った「赤スキンちゃん」と名乗る半裸の男が現れたんだ。


その「赤スキンちゃん」が、ひたすら女の子を口説いて狼になる劇だったなぁ。



あの時、殴ってでもまともな職に就かせれば良かった。思えば、傷つけないように「面白かった」って言ったのが間違いだったんだよなぁ……。



「おい兄ちゃん!ネークスト!!手ぇ止めんなよ!」

「あぁ、はいはい」


刷り上がったばかりのチラシを渡すと、晃司は猛ダッシュで配りにいく。

やだなぁ。コイツがやる気になってんの、やだなぁ……。でも、やる気になってくれないと困るし……。


うん?なんかこの机、震えてない?あ、電話だ。


「はい、大友です。えぇ、よろず屋です。え?人探し?そういったのは探偵のほうが……。いや、まぁそういうことなら。はい、はい。明日の16時ですね。お伺いします。失礼します」


どうしよう晃司。人捜しだって。めんどくさいのは、お前だけでいいのに。

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