第3話 紅蓮を囲む丘陵

 エリア3の主要基地「センダイ」は、紅蓮の炎に包まれていた。その光景を、僕達は丘の上から眺めていた。


 S.I.L.Fの侵攻以降、各地区に防衛拠点が建設された。とは言うものの、実際には既存の街の周囲に防衛壁、ミストルテインの格納庫の建築など、微々たる要素を追加しただけであった。街を取り囲む防衛壁の高さは5メートルで、主要都市はその倍の10メートルある。ミストルテインの装甲と同じ材質を、何層にも重ねられているため硬度はミストルテインよりも上だ。だが、その壁が突破された。防御壁のぽっかりと開けられた大きな穴に、ベスタ級の群れが次々と吸い込まれていく。



「何だよ、これ……」

パーセルが呟く。ここに居る全員が同じことを思っていただろう。これまでにただの一度も、主要都市が陥落したことはなかったのだから。

 壁上では、監視役であったろうミストルテインの残骸が火を上げている。


「ナンバー782。何か情報は」

「ダメだ。繫がらない」

先ほど徐に繋がった無線は、ノイズを垂れ流すだけであった。

「そうか。これから我々はどうする」

「どうするもなにも、助けに行くしかないだろうが!」

パーセルが声を荒げる。

「ラルカ、僕達の周囲に敵影は?」

「大丈夫です。ありません!」

ラルカは僕からの指示が飛ぶ前に、周囲の索敵を行っていた。横目でメーターを確認する。燃料は底を尽きかけていた。

「正直、今のままでは助けにいくのは得策じゃない」

「おい!ゼーマンや他のみんなを見殺しにするのか!」

「違う。まずは落ち着いてくれ、パーセル」

今にも飛び出してしまいそうな彼を宥める。

「燃料が少なくなった今、無暗に突撃しても、それは犠牲者をただ増やすだけだ」

「俺たちなら何も問題がないだろうよ!」

「この人数では、全てを助ける事はできないよ。だからこそ、冷静な判断が必要なんだ」

呼吸を少し長めにし、一拍置く。

「まず、これから格納庫へ向かう」

「そんな悠長な事ができるか!弾や燃料なら残骸から回収すればいい!」

「それはただの博打だよ。僕はみんなが生き残るための確実な手段を選ぶ。十分な装備を整えてから戦闘だ。これは譲れない」

「クソ!」

「……ティンとラルカは?」

「了解です!」

「選択肢はそれしかないだろう」

ラルカとティンが同調する。

「目指すのは第2格納庫だ」

 センダイには東西南北中央それぞれにミストルテインの格納庫がある。格納庫には燃料や弾薬、武器が準備されている。

 僕達が今一番近いのは、東側にある第2格納庫だ。第2格納庫は中央の次に格納機体数が多い。そのために補給物資も多い。

「ここから第2格納庫は、約1キロか……。出来る限り、戦闘は避けて進もう。ラルカ、悪いけれど索敵はよろしくね」

「大丈夫です!任せてください!」

えっへん、と胸を張っているのが想像できる。

「よし。それじゃあ、行こうか」

2人が了解と返事をする中、パーセルは何も応えなかった。

 

 4機のミストルテインが丘陵を駆け降りていく。

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