第10話 side story 会議
会議は重々しい雰囲気で始まった――。
「エトラス様!わかっているのですか!?」
大きな声で糾弾しているのは、40代中ごろと思われる男性。キッチリしたたたずまいは、国の中でも重役につく者を思わせる。
「あの娘はエルフなのですよ!?」
「ランス、落ち着いてください。」
若干あきれたような声でエトラスは宥める。
エルフ...、そんなかわいいものではない。あの娘はハーフエルフだ。おそらく人とエルフの混血。
「落ち着いていられますか!」
別のところから声が上がる。声を上げたのは、60代くらいだろうか、しかし、年を重ねたことによる老獪さや思慮深さは窺えない。男性の声だった。
「ぺルトまで...この前話したでしょう。」
エトラスの声からは疲れがにじみ出ている。
「エルフを取り立てるなど反対です。召喚士たちの士気にかかわります。北では機械を開発して軍備を増強しようとしていると聞きます。今は試作段階でもいずれ我らの脅威となりましょう。わが国では資源を輸出しなければ生活が成り立たない。同じように機械を作ることなどできはしない。」
ランスと呼ばれた男が会話を引き継ぐ。
「召喚士が十分な力を持つまでは時間が必要です。たとえ、エルフの娘がいかに優秀であろうとも、兵団が分裂しては意味ないではありませんか!」
男たちは声を荒げて抗議する。
いつもこれだ。言い分は一理あるときもあるが、ライラが気に入らないことがまるわかりだ。数年に一度の逸材だろうに。だいたい、ここで優秀な者を取り立てないということは入団基準、ひいては国の方針に逆らうことになるのがわからないのか。兵団は破格の扱いで取り立てられているが、組織としては国の配下である。召喚士の実績あってこその扱いだというのに...私もハーフエルフは恐ろしいが....
「優秀な者を取り立てる。それは、エルフであってもです。そのほうが早く力を得ることができる。方針を変える気はありませんよ。」
言い捨てて、エトラスは席を立つ。
「お考え直しください!」
ほかの者たちの中には立ち上がりものをいう者たちもいた。しかし決定権はエトラスにある。国の軍事にものを言えるという立場だけでなく、昔残した戦績は兵団の者たちも無視できなかった。エトラスには友がいた。友も同じく召喚士だった。エトラスとともに戦い、窮地を救った友は優秀であったが、平民の出だった。自分の影に隠された友は...。
「方針を変える気はありません。」
はっきりと言い放つ。
「ここまでにしましょう。」
いつも堂々巡りの会議に終わりの合図をして、そのまま部屋を後にした。
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