第5話 目が覚めると 2
再び目が覚めたのは、その日の夕暮れだった。
最初とは違い、倦怠感もなく、頭もすっきりしている。
だが、こんな時間に起きても特別することはない。また寝るにしても、今までずっと寝ていたのだ。また眠れるとは思えなかった。
いつもなら、訓練をしている時間だ。ライラの師も、今頃は訓練をしているのだろうか。
アーレイは、初対面の時から表情に乏しく、口数も少ないが、ライラがエルフでも、召喚師としていつまでも成長しなくても変わらず指導に付き合っていた。
召喚師の子弟制度も個人により様々であるが、基本的に第一線で活躍している召喚師が付くこともあって、実質的に指導を受けることは少ない傾向にある。その点、ライラたちは違っていた。
ライラはエルフということもあり、あまり人間から好意的に受け入れられることがない。アーレイと特に仲がいいというわけでもなかった。召喚師に何か思い入れがあるわけでもないように見える。アーレイが今日、顔を見に来た時も、ライラは不思議に思っていた。
アーレイは貴族だと聞いたことがある。召喚師には、珍しい出自同士ということで、ライラを気にかけているのだろうか。
気が付けば、日が沈んでいた――。
報告書を書けるように、聞いたことだけでも日記につけることにして、手早く書き込む。
それも終わり、しばらくしたころ、アーレイがやってきた。
「気分はどう?」
「だいぶすっきりしました。」
「明日からのこと...」
アーレイが言いにくそうにしている。
「何かありましたか?」
すぐに返事は来ない。思い当たることはないので続きを待つ。アーレイはしばらくためらった後、こう告げた。
「ライラの召喚獣のことが有名になってる。」
「かなり強い召喚獣ではないか、と。」
考えていなかった。ライラは臍を噛む。
ライラが召喚師として戦場に立ったのはこの間が初めてである。その時の記憶があいまいだったことに加えて、ライラはそれ以前に召喚獣を見たことがない。召喚獣の強さなど、考えることができなかった。
「どのくらい広まっていますか...?」
憂鬱な気持ちになりながらも訪ねてみた。
「国の報告を受けつける場所には。召喚師の間でも広がってる。」
「そうですよね。」
国には召喚師は戦争のほかに、召喚師として関係あることは報告する義務がある。召喚師の数少ない義務の1つだ。召喚獣を呼び出したときに、ほかの召喚師もいたということだから、話が広まることも自然なことでしかない。表情に出さないように注意しつつも、話を聞きながら、ライラは暗い気持ちになっていった。
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