第4話 目が覚めると

意識がぼんやりする――。

声が聞こえる。頭の中に響くような声だ、とライラは思った。


「長老!長老!」

聞きなれた声が頭の中でこだまする。懐かしい気持ちでいっぱいになる。しかし、あれはどのくらい前のことだったか、どのようなことだったか、なぜがはっきりと思い出せない。

「ライラ。」

自分を呼ぶ声が遠くで聞こえる。長老と呼ばれたエルフの姿が次第に鮮明に脳裏に浮かび上がる。

「ライラ。よいか。エルフは決して理をたがえることがあってはいかん。」

懐かしい声だ。これは夢なのだろう。ライラの過去だ。そう思いながらも意識はぼんやりしていて、次第に何も考えることができなくなっていった。


目が覚めると、見慣れない天井が目に入った。

頭がぼーっとする。何か夢を見た気がするが、どんな夢だったか思い出せない。なぜここにいるかさえわからなかった。強い倦怠感に勝てず、再度、横になる。

どうしてここにいるのかしら。

考え始めたときに、アーレイが入ってきた。

「起きた?」

なぜかわからないが心配されているようだ。手には水差しを持っている。

「ここは?」

ライラは尋ねる。

「どこまで覚えてる?」

聞かれて必死に思い出す。確か、帰路の途中で何者かに襲われて――?

「召喚獣を使ったことは?」

そうだ。何者かの声と契約して、そしたら召喚獣が表れて――。

ダメだ、よく思い出せない。

「帰路の途中に何者かに襲われたところまでは思い出せるのですが。」

「それから、何があったのですか?」


アーレイは水差しから水を汲んで、渡してくれた。

「ありがとうございます。」

受け取って水を飲む。コップを置いたのを見てから、アーレイはその後を話す。

ライラが召喚獣を呼び出したこと。召喚獣が襲ってきたものを撃退したこと。それを確認して、ライラは倒れたらしい。ここは、召喚師たちの詰所の医務室のようだ。

「私が召喚獣を?」

「間違いないと思う。」

「アーレイ様がそう仰るのでしたら、本当なのでしょう。」

「倒れてからどのくらいになりますか?」

「2日。」

「もう少し休んだほうがいい。」

「はい。」

頭がぼーっとする。今起きても何かができるとは思えなかったので素直に従った。

「また来る。」

そういうとアーレイは水差しを置いて出て行った。

何かを考える元気もなく、すぐに眠りに入っていった――。

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