File.2(おまけ) とある昼休みのこと

「なあ魅月みつき


「どうしたケンザン」


「そのあだ名やめろ。――っと、それは置いといて……お前確か、霊感あったよな?」


「あれ? なんで知ってるの? その『ごくひ』事項」


「この間お前、平子と話してただろ。聞く気はなかったんだけど、後ろの席で話されるもんだから耳に入っちゃって。……なんかすまん」


「あー、そういうことか。別にいいよ。――で、俺の霊感がどうした?」


「……ちょっと見て欲しいんだけど、俺ってなんかの霊に取り憑かれたりしてる?」


「? いや、何も憑いてないけど?」


「そうか……ならいいんだが……」


「……なんかあった? 霊関連なら力になれるかも」


「えーっと……たぶん霊とは少し違うんだ。……俺最近、ドッペルゲンガーによく遭遇するんだけど、どうにかならないか?」


「ドッペルゲンガーって……さすがに見たことないし、わかんないな……。ってかあれって、会ったら死ぬんじゃなかった? ケンザン大丈夫なの?」


「だから…………」


「ん? どうした?」


「いや、『そのあだ名やめろ』って言おうと思ったけど、不本意なことに俺今、そのあだ名のおかげで奴らに殺されずに済んでるから、なんとも言えなくなった」


「何わけのわからないこと言ってんの。――つーか『奴ら』って、ドッペルゲンガー何人いるんだ」


「……今のとこ五人」


「……お前いつか死ぬんじゃね? ……まあとにかく、申し訳ないけど俺じゃ力になれそうにないかも」


「いいよ別に。霊が憑いてないってだけでも多少安心した」


「一応、お祓いとかできる神社なら知ってるけど」


「……そうだなー。ほんとにヤバくなったら行ってみるわ。まあドッペルゲンガーたちも、鬱陶しいだけで今のところ危害はないから大丈夫」


「ドッペルゲンガーって『鬱陶しい』で済むものなのか……。数といい、どうなってんだよ」


「実際俺にも何がなんだかサッパリわからねー」


 そこでチャイムが鳴り、休み時間は終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る