第17話 揺れゆく感情

輝と写真部を追い出した後、俺の何かがふつふつと湧き上がったような気がした。あの、朝比奈とミチルの抱擁……。どこか悔しがっている俺がいた。そうまるで、浮気現場を目撃したときのような屈辱。

「お兄様、遊びましょう?」

そんな悩ましい俺に構わず、美玲の声がする。

「うわっ」

美玲の顔が俺を見上げていた。身長差があるので俺の顔には届かないが、もし同じ背丈だったら……。

「お兄様、鼻血が出てますよ」

鼻の下をこすると真っ赤な血。きっとあの妄想でなったのだろう。

「嬉しいです。私のことを考えて鼻血を出すなんて」

美玲はそう言って俺に胸を押しつけながら垂れている血を舐めている。

「美玲、血を飲むのは危ないらしいが……」

胸を押し付けられているからなのか、鼻血が止まらない。

「おいしいです。あれ、口元に血が垂れてますよ」

美玲はわざとらしく言い、口元の血を堪能する。……キスだ。い、妹とキスをすることを考えていたこの俺が、本当にキスを……

「お兄様、顔が赤いですよ?」

美玲は、意地悪く笑っている。いけないことなのに俺はもっとしたいと思う自分もいる。

妹なのに。

「美玲、そこまでにしたら?」

女の声には低く、男よりは高い声が頭上で響く。どこかその声に安らぎを感じてしまう。

「何?ミチルには関係ないでしょ?」

よく見ると、美玲は睨んでいる。

「兄貴が困っているから」

ミチルは寂しげに冷たく言っている。それはまるで、叶えられない望みでもあるかのような。

「わかったわ」

美玲は唇を噛み、リビングに入っていった。

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妹に情を持つなんてどうかしている。 花月姫恋 @himekaren

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