第9話 ミチルのこと知らないのか

ミチルに悪いことをしたな。俺は、学校でネタ帳を開き、今朝のことを思い出す。

「よお、怜。何してんだ?」

輝が、ネタ帳を覗き込む。しかし俺は、見せないようにネタ帳を閉じる。

「そういえば、お前、小説書いて応募するって言ってたよな。今度俺に見せてくれよ。」

輝は、思い出したように言う。だが、こんなもの見せられるはずもない。なにせ、文章が下手だからだ。俺は、中学の時、先生に小説を書いて欲しいと言われたことがある。だが、最初に書いてきた小説とは、少し違う話になっていた。それほど俺は、下手なのだ。

「いや、ダメだ。これは、輝にでも見せられない。」

これが一番である。

「まさか、エロ小説か。」

輝は、少し目元が緩んでいる。まあ、あながち外れてはいないのだが。

「なあ、日影。ちょっといいか?」

朝比奈たちが、俺の机に集まる。

「実は、写真部の今月の課題が可愛いなんだ。それでなんだが、」

朝比奈は、一呼吸をおく。

「美玲ちゃん撮りたいと思っているんだ。」

また、勝手なことを。

「可愛いといえば、ミチルちゃんもそこそこだよな。」

輝が、また思い出したように言う。そこそこって。俺は、輝に怒りを覚える。

『ミチルちゃん?』

三人が、声を揃える。ミチルだって、可愛いのに。

「ミチルは、美玲の双子の姉。」

「へえ、ミチルちゃんか。」

朝比奈は、そっと呟く。だが、二人の反応は、薄い。

「そういえばさ、いつ、日影の家に行くの?」

まるで、もうミチルちゃんの話はいいとでもいうように、橘が言う。聞いてきたのは、そっちなのに。

「明日は、無理。5日も予定がある。」

きっと部活だろう。だが、写真部の活動は、そんなにあるのだろうか。

「さすが、次期部長、朝比奈碧斗。」

橘が朝比奈を冷やかす。部活の日の把握など、誰でもしていると思うが。

「4日はどうだ?俺、その日しか空いてない。」

更科は、中学の同級生と遊ぶらしい。

『いいぜ』

俺と更科を除く三人が同意する。まあ、いいと思うが。

「あとさ、この話ミチルちゃんと美玲ちゃんにはしないで。4日に伝えたい。」

朝比奈は、何か考えているようで怖かった。



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