第5話あいつはぜってーだちなんかじゃねー
おれに、「ぼうっとしてるねえ」、というのが彼女の口癖だった。ぼうっとしているというような感覚はなにもないんだが。
そんなふうに他人からは見られているのかと、ちょっとショックを受けたくらいだ。
自分の顔のことにしてもそうだ。
「安楽くんってさあ。茶色い卵に海苔をつけたみたいな顔してるね」って、堂々といきなりそんなタトエをしてくるんだ。
確かにおれは日に焼けてたし、顔は卵形だし、眉毛は太い。ちなみに髪型はセンター分けだ。
「冴嶋さんはそれじゃあキツネだな。おかっぱのキツネ」だなんて、おれがいい返したら、冴嶋さんは黙ってしまった。
まだ新しいクラスになったばかりの頃の話だ。
変なやつだなあと、おれは思っていた、
最初のうちはあんまりしつこく話しかけてくるもんだから、おれに気があるんじゃないかと疑ってしまったほどだ。ウザいくらいだった。
だが、どうもそうではないらしい。
あの頃はプロ野球が始まって、よく盛りあがっていた。ちょうどアイスがおいしくなってきた頃だった。冴嶋さんも、ただ単に席が近かったから話しやすかったんじゃないかな。
そんな感じで、冴嶋さんとは学校でも結構仲がいい方なのだ。友達とは呼べないくらいの、友達のその下ぐらいの軽い友達といった仲。なぜだかおれは冴嶋さんを友達だなんて認めるのが恥ずかしいんだ。。。
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