第15話 Ⅱ 思考
「敵の作戦は西側から本隊が侵入してきて、時差で南側から奇襲が来るらしい。南側にこの国の兵士を置いて来たから本隊をどうするか考えよう」
リッシャローズ家の食堂で私とローズラルを囲んで作戦会議が行われていた。
テーブルにはこのあたりの数種類の地図が並べられている。
こういう作戦を立てるのは斗紀が得意なんだけどな。
そうは言ってもここに斗紀はいない。魔法使いたちは茨を維持するのが精いっぱいのようであまり魔法は使えない、とのこと。
「と、言うことは実力行使……?」
「今、領地には戦える赤目系魔法使いはほとんどおりません……。少しでも侵攻の時間を稼ぐために戦地へ……」
ローズラルは悲しそうに呟く。
私は自分の掌をおもむろに目線まで上げ眺めるがすぐに下げる。
私が魔法を暴走させたら領民まで巻き込んでしまうかもしれない。
そう思うと私が魔法を使う気にはなれなかった。
「リンネル様、ローズラル様、発言の許可をいただけますかな」
ドアが開き、リッシャローズ家元執事長が入ってくる。
「爺!なりませんわ!爺は休んでいませんと!!」
ローズラルが慌てて駆け寄る。
「私は聞きたい」
ローズラルが傍らに立つ。
「リンネル様、爺はもう……長くはないのです。無理をすればいつ逝ってしまうか……!!」
泣きそうなローズラルが反論する。
「ローズラル様、生きとし生ける者、いつかは逝くものです。この窮地を脱することが出来るのなら爺は満足ですぞ」
「そんな……」
「端的にお願いします」
なりふり構っていられない。まさにこういう状況。今ならなんとなく召喚の儀式をした魔法使いたちの気持ちがわかるような気がした。
「わしは幻魔法を得意としております。弟子も何人かおります。本隊に何か幻術を見せて引きかえらせれば今夜の危機は脱することが出来ましょうぞ」
今夜追いかえす。確かにそれは最重要目的。だけど領地から追い返すことは出来ない。
南側の穴がどこに繋がるのはなんとなく把握している。どこかの家の地下室だった。
まず南側をこちらから奇襲してルネサスとシルヴァと合流して……。
「こういう作戦はどうだろう」
私は思いついたことを説明した。本当にうまくいくか分からないけど次に敵が攻めてくるまでの時間は稼げる。
そしてグレースルー国軍が手を引くような作戦。
元執事長が持つか分からないけれど……。
確証はないけど、私の中には自信が満ちていた。
ローズラルもどうにか承諾してくれた。
まず私たちは茨に囲まれた敷地内にある家で一番南にある地下室へ向かった。
案の定、少し壁が崩れ、また塞がれたような跡があった。
赤目系の魔法使いに遠距離の殺傷力の低い魔法で壁ごと吹き飛ばしてもらうと、私を含めた近接武器を使える人員が突入する。
できるだけ殺さないように指示する。私たちの後に青目系魔法使いが突入し敵を拘束、死なない程度に治癒をする。
予想より人が少ない。道場での100人斬り稽古を想像していたが、そんなに多くない。
あっけなく敵側の入り口に着くと理由がわかった。ルネサスとシルヴァが孤軍奮闘していたのだ。
深緑色のテントは燃え、二人は背中合わせになり剣を構えている。二人を中心に敵兵たちが剣を構えている。
「絶対絶命ってやつ?」
そう二人に叫ぶと、私を含む近接武器部隊が加勢のために勢いよく穴から飛び出した。
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