第6話 目覚め

ピピピピッと、聞き慣れた平和を引き裂く音がする。オンコールの時もこの音は緩やかな日常を奪うものではあったけれども、このご時世では、闘いがあったことを知らせる音であり、誰かの命が消える音でもあるのだ。


「はい、デルタ今いくわ。」


枕元で鳴いていた旧式のピッチに出ると、相手に現場特有の緊張とそれに混じった戸惑いを感じた。


「……それ、俺のピッチ。」

「ああ、なるほど。戸惑わせてごめんなさい、エースと一緒にいくわ。」


一言で切るのが基本の通話に言葉を付け足して、身体を軽く伸ばす。眠った時間は短い割りに深い眠りが取れたらしく頭はスッキリしていた。


「気分は?」


もう切り替えた顔をしているAが私に問いかける。いつでも思ってたけど、再度思う、Aは優しい。


「最高よ。」


私は切り替えた顔を外してできるだけの笑顔でAに返した。

……たぶんこれがAが見た私の最後の笑顔。

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