第4話手合わせ
「ハハハ、お前ら血の気あまりすぎだろ。」
見張ってないと余計な怪我しそうだと、ついてきたAが見ている目の前でアップを終えた私たちはかれこれ15分ほど手合わせをしていた。
機械人が現れてすぐに改装されたこの病院は多少無理矢理ではあるが、地下一階にトレーニングルームがあり、手合わせもできるようになっていた。
皮肉にも機械人のなかで特に厄介な中型の動きが人間に似ているため、人間同士の手合わせが機械人対策になるのだった。
「あはは、あんまり鈍ってねーじゃん!」
「そうでもないよ、流石に、疲れてきた。」
私の振った模擬演習用の刀がCのいた空間を薙ぐ。身軽なCがそれでとらえられると思っていない私は移動した先に同じく模擬演習用の銃弾を放つ。
しかし、それさえも見切ったようにCは遮蔽物を使いながらそれをかわし、私に数発の銃弾を放つのだった。
「いっつ。」
「お、当たった?」
かろうじでかわしたつもりだったが、その銃弾は私の右頬と脇腹を掠める。私はまだ刺されたことも撃たれたこともないため、これでどれくらい自身のパフォーマンスが落ちるのか想像もつかないが、機械人の弱点に当たるまでやり続けるのが手合わせのルールであるため、手合わせは続行される。
「ほらほら、動き鈍くなってるぞー。」
「そりゃ、疲れてるからね?」
長距離からの狙撃に切り替えたCの戦法は近距離戦を主にする私にとっては分が悪い。
一度遮蔽物の密集する場所に身を滑り込ませながら足で距離を縮めることにした。
「おっと、見つかったか。」
機械人の装甲は硬く、遠距離からの攻撃ではどうしても数を撃ち込んでいく必要がある。そのため居場所が見つかりやすいという難点があるのは、本人が一番解っているからだろう、言葉ほど驚いた様子なく私を見つける。
「かくれんぼの鬼は得意でね?」
長物では早さで負けるため日本刀は途中で捨て、ナイフでCの首を狙う。
機械人のウィークポイントは関節であるが、息の根を止めるという点では、頭部も胸部も守られているため、人間でいう首と頭の繋ぎ目を狙うしかない、そのため遠距離で足関節等を狙い動きを止め、近距離で息の根を止めるのが主流の戦い方である。
ごく稀に力業で粉砕する馬鹿力もいるらしいが。
「チッ、あっぶね。」
ナイフはCの首の薄い皮膚に赤い痕をつけたが踏み込みがあまく致命傷にはならない。
逆にCが銃から持ち替えたナイフが私の喉元を掠めていくのを風圧で感じながら、本能的に身体を仰け反らせた、その瞬間、
「え、は?」
「おい、D!?」
二人の声を耳に捉えながらも、視界は暗闇の中に沈んでいった。
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