第2話 現状

「…腕の一本や二本とれてる人間を見慣れるとは思わなかったよ、ほんと。」


Aがぼやくように、都心にあるこの病院で酷い外傷で運ばれる人間は大概交通事故で、精々開放骨折や複雑骨折くらいだった。

山の近くの病院等では工事現場勤務や工場勤務が多くなるため、切断やパイプ貫通などの事例が多くなると聞くが、それでもほぼほぼ毎日見ることはないだろう。


「本当に、痛々しいというよりは人数が多くてくっつけられるかなって考えになるのが嫌になる。」

「医療器具や薬も不足してきてますし、命最優先で欠損状態のまま諦める人も多くなってますからね…。」

「……あんまりアンタは思い悩まないのU(ゆう)お腹の子まで元気なくなるわよ。」


ほぼ2日ぶっ続けの勤務のあとちょっと寝ただけで医者がERに駆り出されるように、優秀な看護師もまた不足しているため身重のUも駆り出されていた。


「えへへ、そう、ですよね。」

「そうそう、UちゃんはC(コー)とお腹の子のことだけ心配してな。」

「まあ、この建物勤務であればまだ安心だろうけど!よしできた、この人このまま病棟にまわして、ちょっと要注意ではあるけどICUも空いてないだろうから。」

「はい!」


地上で機械人に歯向かう民事組織、警察、自衛隊などのために東京で唯一地上に残された病院には自衛部隊が組まれており、Uの夫であるC(コー)はその部隊の若手である。


「そのままUちゃんは休憩しちゃいなー。追い詰められるのは医者だけで十分だからさ。」


そう後ろから声をかけるAに、ありがとうございます!と、綺麗なソプラノの声で返してUは患者を移送していった。


「はー、このまま落ち着けばいいんだけど。」


私の呟きは次の急患がつれて来られることを知らせるコールでかき消された。

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