東ノ京ガ終ルマデ

金魚殿

第1話 現状

「あー、つっかれた。」

「お疲れ様、あがり?」

「そんなもんあるわけないでしょ。仮眠よ、仮眠。」


スマホやら手持ちの端末に見覚えのないアラーム音と、禍々しい画面が浮かぶようになってから早半年。

人類は衰退の一歩をたどっていた。

どこに現れるかも予測できない、人型の機械のような生命体は謎の通知によれば“機械人”というらしい。


「だよなー、俺もだよ。40時間ぶりの布団だ。」

「……労基どうなってんのかしらね、ほんと。」


その機械人は平和ボケした日本の中枢東京に突如として現れ、重軽傷者合わせて23名と、4人の死亡者を出して消えた。

きっと人類がこれからも生き残れるとしたら歴史に名を刻む重大事件となるだろう。

それから政府の対応の遅さや、様々なカルト団体の陰謀説等々がワイドショーを賑やかせたが、それが日本のみならず諸外国まで広がるのは一ヶ月かからず、チープな仮説は75日を前にたち消えたのだった。


「労働基準法なんて文明もうこの世には残りようもないでしょ。人がどれくらい生きてるのかもわからんのに。」

「……少なくとも中枢をここにだけ置いたこの国はもうおしまいね。復興まで何年かかるか。」

「復興するよりか、京をすげ替えた方が早いよ、ほんと。」


ほぼ毎日どこかで鳴るアラームを恐れ大半の人々は地下鉄を利用したシェルター等に逃げ込んだ。多くの出入り口は簡易的に埋められ一部の通路以外からは侵入できなくなっている。


「じゃ、おやすみ。」

「ええ、A(エース)もいい夢を。」


機械人についてこの半年でわかったことはすくない。わかっていることは関節(のようなところ)が弱点であるということ。

3メートル以上の大きさの個体、1メートルから2メートルの個体、1メートル以下の個体で大まかに分類され、大型、中型、小型それぞれ動きや、知能に違いがみられる。

大型個体は鈍足で、知能は低いが関節も破壊が難しいほど堅い。

小型個体は俊敏だが、知能が低く、集団で襲ってこない限り殺傷能力は低い。

一番厄介なのは中型で、頑丈さや俊敏さこそないが、知能が高く周りの個体に指示が出せるようで、こいつが襲来したときには死傷者数が跳ね上がる。

そしてなぜかこいつらは人のみを狙う。

家畜や昆虫類などの生物は一切狙わず、建物等に関しても人間を抹殺する以外の目的で破壊することはない……それくらい。

日々増える死傷者と、先の見えない戦いにすべての人が疲弊していた。


「…ここも、あとどれくらいもつのかしらね。」


地上唯一の病院は今日も眠らない。

見えない未来に手を伸ばす私たちと共に、人類の矜持を守っているのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る