忘れたモノ

黒葉(くろば)視点


※短いです


黒葉「…………」


???『………隣にお前のいないこの世界で俺は生きられない』


黒葉 昔………入院をしだした直後誰かに言われた言葉………誰に言われたのか………


???『お前は俺を忘れるだろうな 生きる世界が変わるから』


黒葉『え?』


???『………First Dragonは闇から消えるってことだ』


黒葉『でもお前……その名はスフィアから譲り受けたものじゃ………』


黒葉 今の俺では「スフィア」が誰なのかもわからない………


黒葉は1人になると脳裏に広がる言葉をただ思い出す………それが自分が忘れてしまった「大事なモノ」だと分かりながら………


???『スフィアは「名を呼ばれたくない時が来たら自分の存在を消して また戻ってくればいい」とそう言っていた………だから俺は存在を消す』


黒葉『???………』


黒葉 この時俺は名前を言ったはずなのにその名前が思い出せない………


???『お前に忘れられても俺は生きていける』


黒葉『!???!!』


???『さようなら 俺が愛した人』


黒葉 その言葉を最後に俺は彼とは会っていないんだろう………とてつもなく悲しげな顔を見せてその場を去っていった彼に………


日に日に失われていく彼との記憶とそれに気が付かない黒葉………病を患う前………闇の世界で頂点を争う程強かった彼の二つ名「Black Moon」……今ではもうその名を知るものは少ない


黒葉 大事なものだったはずなんだ………でも……思い出せない………時折夢で見る光が反射して顔の見えない名前もわからない彼………きっと彼と俺は恋人同士だった………俺と彼はキスだってSEXだってしていた………なのに………名前を呼べば俺が言ったはずなのにその時だけは聞こえない………俺を呼ぶ声は聞こえても………肝心の名前の部分がわからない………


黒葉「…………」


気が付かぬ内に黒葉の瞳からは涙が溢れて流れていた………


黒葉「…………」


黒葉 誰なんだ………お前は………


黒葉は静かに涙を流しながらそう思った………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

忘れし温もり ガルガード @Garugard

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ