第35話『陰と陽 2』


颯太と時雨は、ぬらりと立ち上がり宙に浮いた灯弥目掛けて攻撃を仕掛ける


隣合って飛び込んだ2人はシンクロするような動きで

颯太は左、時雨は右のパンチ、次はその逆の拳を

蹴りを、また拳をと連続で畳み掛けるが

灯弥は両手でそれぞれの攻撃を全て防ぐ



「ふむ、速く重い良い攻めだ

並のクラス3程度なら一撃で消し飛ぶな」


「「うぉーっ!!」」



さらに速度を増した連撃を仕掛ける


攻撃を受け止めていた灯弥の手を外側へ弾き

空いた胴へ同時に蹴りを放ち吹き飛ばした



「よしっ!手応えありや」


「でも、このくらいじゃ終わらないだろうな……」



飛ばされた灯弥は黒炎の翼をバサッと広げ空中で静止した


2人の気を込めた蹴りをまともに喰らった腹部には2つの抉れた傷があったが、見る間に再生していく



「「!?」」


「……足りんな、この程度では」



傷が再生していく様を見ていた2人だが、気付いた時には両手をこちらに向けた灯弥が既に眼前で構えていた


開いた掌に気が収束していく



「やばっ!」

「くっ!」



2人は両腕を前に組み瞬時に防御の為の気を練る



「遅い!」



灯弥の掌に集められた気が、真っ黒な火炎放射のように2人を炎で包む


その炎が消えかかった時、炎が2つに割れ颯太が拳を構えて飛び出した



「おぉりゃーっ!」



とっさに前に構えていた腕を顔の前に戻し颯太の拳を防ぐが

雷を纏った拳と、その後巻き起こった竜巻によって後方へと押し戻された



「はぁはぁ、助かったよ時雨」


「まだや、ここから更に全力で叩き込む!」


「おうっ」



押し戻された灯弥の両腕は折れ、力なくダラりと下がっていた



「時雨が防御領域を広げて攻撃に力を割かせたか

いい連携だ」



また再生していく腕を見て2人が追い打ちをかける



「再生する隙は」

「あたえへんでぇ!」



颯太は灯弥の頭上から拳を打ち下ろし地面へと叩きつける


「せえいっ!」


その間に時雨は上空に積乱雲を発生させ全力で気を集中する



「颯太ぁ!!」


「おうっ!」



颯太は空中を蹴上がり雲の上へ出ると、全身の気を右拳へと集中させた



「喰らえぇーー!」



真下へ向かって一気に雷の気を放出すると

時雨が創り出した積乱雲を通過した雷は

極大の落雷となって、轟音とともに地面にめり込んだ灯弥に直撃した



「やったか!?」



散っていく雲の隙間から下を見ると

ひび割れた地面に出来た大きなクレーターの中心に

煙をあげて動かない灯弥が確認出来た



「これだけの攻撃を受けて無事やとは思いたくないけど……」





*****





天候すらも操るまでに至った2人の攻撃を受け

吹き飛んだ四肢を再生するには時間がかかりすぎる事を確認した灯弥は

このままでは勝ち目がない事も悟っていた



『ここで幕引きか……それも…………良いか……?

いや……ここまでやっておいて、おめおめと死ぬのか……?

千鶴が死んだ日……私は誓った……

全てを終わらせなければならないと…………

私は……全てを超え……全てを…………終わらせる……!』


[我ノ力ヲ使ッテオイテソノ程度カ

所詮ハ人間……]


『……陰め、何のつもりだ?

お前からコンタクトを取ってくるとは……』


[オ前ノ体ヲ我ニ差シ出セ、ソノ体ヲ依代ニ我ヲ現シ世ヘト解放スルノダ]


『…………どうせこのままでは私は死ぬ……

好きにしろ……だが、思い通りに行くと思うな……

私の体の主は……私だ!』


[抜カシオルナ……サレバ念ジヨ

我ヲ封ジシ、忌ムベキ宝玉ヲココへ……]




*****





空中にいる2人と地面にめり込んでいる灯弥との間の空間が歪んでいく



「な、なんや!?何が起きてんのや?」


「とてつもない力を感じる!何か来る!」



歪んでいた空間に亀裂が走り、別の空間と繋がったその穴から光り輝く宝玉が顕現した



「陰陽玉やと!?」


「なんでここに!?」



太極図のような模様をした宝玉は、回転してその模様が混じり合い

その宝玉を挟むように上下に白と黒の魔法陣が現れる


颯太は深くドクンと鼓動が鳴るのを感じた



人智を超える何かがこの場に起こる

それが何かは分からずとも2人はそう確信した


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