第33話『本部防衛戦 3』


「ぬおぉーっ!」



獲物に飛びかかる猛獣の様に、燃える鉤爪で襲いかかる弥一

紙一重で躱したクラス4を、さらに踏み込み左右の連撃を加えていく


突撃をかける弥一の猛攻を横に躱したクラス4は

一瞬で飛び込んできた団蔵の体当たりに近い肘打ちで吹き飛ばされた



「手応えはあったが……あんまり効いちゃいねぇな」



特にダメージを感じさせず立ち上がった相手に愚痴をこぼす



「時間をかけるとこちらに不利じゃ……そう長くはもたん」


「えらく弱気じゃねえか、まぁ確かに老人2人に持久戦はキツいわな」


「弥一様ー!」



東の湊、朔弥と南の咲が合流して弥一たちの元へと駆けつけた



「あの姿……本当に現れたんですね……」


「咲ちゃんは前に戦ったんやったね、間違いないか?」


「ええ、間違いなくあいつはクラス4……大丈夫ですか?

弥一様、団蔵様」


「あぁ何とかな、あんな奴がいたとはなぁ」



そこへ遅れて颯太と時雨も合流する



「すみません、遅くなりました!」


「ほんまに出てきおったんやな……颯太、今度こそ仕留めるで!」


「そうはいかん」



気合を入れた2人を弥一が制止する



「なんでです!?あいつは……」


「仇を打ちたい気持ちはわかる、だが戦うべき相手を見誤るでない

ここはわしたちで何とかする、お前たちは灯弥の元へ急ぐのじゃ」


「……わかりました」


「颯太?」


「俺だって叔父さんや母さんの仇を討ちたい

でもそれは団蔵さんや玄真さんも同じ気持ちだろ?

だったら、俺らは俺らのやる事をやらなきゃ……」


「……そうやな……その為に手に入れた力なんやから」


「聞こえたか?玄真」



弥一が問いかけた時にはすでにこちらへと降りてきていた



「もちろん、これはわしたちの役目だでの

直接娘たちをやった相手では無くても……の」


「そういうこった、ここは俺たち老人に任せて先を急ぎな」


「私はまだ老人じゃないですよ?でも親友たちの仇は取らにゃいけませんがね」



元老院のメンバーが意気込んでいる所に朔弥が言う



「弥一様、ここは一手でも手数があった方がいいでしょう

私にも手伝わせてください」


「それもならん、お前はすぐに車を用意して時雨と颯太を連れて行ってやってくれ

咲は残存部隊の指揮を任せる

残念じゃがおぬしたちでは力不足、ここはわしらに任せい

皆の事は頼むぞ」


「……了解しました、直ちに!」


「では私は第2波に備え防衛線を構築します、時雨さん、颯太くん……ご武運を!」



指示を受けた2人はすぐに行動を起こした


こちらの動きを見たクラス4はこちらへ向けて衝撃波を放つ



「させん!」



迫ってくる衝撃波に対して、弥一が炎の壁を創り出し防ぐ



「おぬしらも下がれ!あやつの事は任せよ!

灯弥を……止めてくれ」


「「はいっ!」」



後退する2人を見送り、炎の壁の内側で弥一は全員を見渡す



「紫電の団蔵、護風の玄真、氷槍の湊……

久々の連携じゃ、抜かるなよ!」


「「「おうっ!!」」」



壁が消えた瞬間クラス4が低空で飛翔して襲いかかってくる



「させんの!」



両腕を突き出した玄真はクラス4へと突風をぶつけて動きを鈍らせる

弥一はその風に乗せて爆煙を放ち完全に動きを止めると

距離を詰めていた団蔵と湊が手刀と槍でクラス4の両腕を切り飛ばし、腹部へ同時に回し蹴りを放って後方へと吹き飛ばした



「再生する暇は与えん!!」



玄真の創った竜巻で上空に飛び上がった弥一は

仰向けに倒れたクラス4目掛けて燃える獅子の様に降下し

首を両手で鷲掴んで持ち上げ、力任せに引きちぎった



「首を落とせば流石に再生出来まいて

皆の者、残った体も消し失せい」



湊は右腕、団蔵は左腕、玄真は首から下を全開に高めた力で粉々に砕け散らせた


残った頭部を焼滅させようと掴んだ右手に弥一が力を込めた時、クラス4の頭部から闇の気が爆発的に放出される



「ぐぬぅっ!!こやつめ、まだ抗うか!」



暗い気を放出する頭部を掴んだ弥一の右手の火が弱まっていき、徐々に黒く変色していく



「その手を話せ!侵食されとるぞ!」


「いかん!今こやつを離せばどうなるか……ぐぬっ!」



団蔵の忠告を拒み弥一も侵食に抗っていた

引きちぎった首の部分から触手が伸び、3人へ襲いかかる



「させんわい!」



弥一が左手でそれを掴み焼きちぎる

そのまま首の断面を左手で抑えるが、その左手からも影が侵食していく



「弥一様!」


「湊!団蔵と玄真も聞けい……

わしの中に影が入ってきておる……もう止められん」


「そんな……!」


「なに、老いぼれの死期が早まっただけの事

死に場所を得たという事じゃ」


「何言ってやがる!?早まるんじゃねぇ!」


「そうだの!まだ手はあるはずだの!」


「いや……影の影響を受けたわしが助かったとてどうなるやわからぬ

ならば!ここでこの命をもってこやつを滅する!

あとの事は湊、おぬしに任せる

皆を導いてやってくれ……」


「弥一……様…………

承りましたっ!」



勢いを増した火の気の増大にクラス4の頭部も気の放出を強める


それを覆いかぶさるように抱きかかえた弥一は命を炎に変え自分ごと業火に包んだ



「わしが燃やすは命の炎、わしごと燃え尽きろ影よ

時雨、颯太……後は頼む!

ぬぅうおーーっ!!」



地面が溶けていく程の熱量を発しながら、自身を天高くまで昇る火柱に変え

屍も残さずにクラス4を道ずれに弥一は焼滅した


残された3人は、空に舞い散っていく灰をただ見つめていた





*****





時雨と颯太を乗せ本部を出た朔弥は

空高く立ち上る火柱を視界に収めながら

止まることなく車を走らせていた



「朔弥さん……アレ?」



嫌な予感がした時雨が朔弥に問いかけたが何も答えなかった



「時雨……もしかして……」


「あれほどの力、弥一さんは……」



重苦しい空気が車内に満ち、少しの沈黙のあと朔弥が言った



「…………だとしても、あなた方はやるべき事があります……

父もきっと、そう言うでしょう……」



颯太たちは何も言えなかった

目を閉じ俯く時雨の手を握り、何も言わずに頷いて

来るべき決戦に向け気を引き締めた


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