第32話『本部防衛戦 2』
湊と朔弥が東門から出て部隊に指示を出している頃
北の方で轟音と爆煙が上がるのを確認した
「弥一様の本気久々に見るな、心強いわ
こっちも気合い入れていくで!」
「はい、湊さん
A小隊B小隊の2チームで中央の戦線に穴を開けます
我々はそこを突破して一気にクラス3の集団へ突貫
よろしいですか?」
「それで構わんよ
こっちにはうちの手練たちも配備されてる、クラス2までは任せて主力を叩く」
「では……A,B小隊突撃!
CからF小隊は左翼、GからJ小隊は右翼の防衛線を維持しつつ前進!」
「「了解!」」
朔弥はその場の人員で即座に隊を組み直し配置、指示を出す
近距離タイプ中心のA小隊を、遠距離タイプ中心のB小隊が援護しつつ敵陣の中央を突破していく
「朔弥くんの手並みには関心やな
ならぼちぼち行くとするか!」
「はいっ!」
2人は両手にそれぞれ水と火の能力を発現させ
湊は氷、朔弥は火の身の丈程もある槍を作り出す
槍を構えた2人は一気に走り出し、奥にいるクラス3たちに肉薄する
「せいっ!」
突撃する格好で槍を腹部に突き刺した湊は、そのまま持ち上げて引き抜きざまに他のクラス3に投げつけて吹き飛ばす
その両脇から2体が拳を振り上げて迫る
それを最小限の動きで躱し、槍を回転させて2体の胴を薙ぐ
「ふぅ、久々の実戦がいきなりクラス3とはなぁ」
火の槍を投げつけ2体を串刺しにし、新たに創り出した槍で流れるような連続攻撃でもう一体を倒した朔弥が湊に言う
「全然なまってませんよ、お見事です」
「そっちも見事やで、師匠として鼻が高い」
「槍術は湊さん直伝ですから、並の相手には遅れは取りませんよ」
昔を思い出して話す2人の背後に新たな影が迫る
湊と朔弥はすれ違うように前方に槍を突き出す
それぞれ腹部を一突きに刺し、引き抜く様に蹴り飛ばした
「さてと、残りは……12体か」
「一気に片付けましょう、後方の部隊の支援にも行かなければいけませんし」
「よっしゃ、6体ずつ……どっちが先に終わらせるか競走といこか」
「いいでしょう、現役としては負けられません」
背を合わせて2人は槍を構える
「よっしゃ、よーい……ドンッ!」
合図と同時に弾け飛ぶように別れてクラス3の集団へと飛んだ
*****
南門の外では、編成済みの部隊がすでに迎撃にあたっていた
「咲さん、敵方の数は増えてはいません
クラス1は7割ほど片付き、5小隊が先行してクラス2迎撃に向かっています」
南側の部隊長が咲に報告する
「わかった、私はクラス3の迎撃に向かう
1小隊を私の援護に回して残り4小隊は引き続きクラス2の迎撃を」
「了解」
無線でその旨を通達した部隊長は戦線に戻り、咲はクラス2の合間を縫うように走り援護の小隊と合流する
3人編成の小隊を引き連れた咲は眼前に見えるクラス3へ迫る
「1体ずつ確実に倒すよ!先ずは先頭のあいつを!」
4人は気を高め、先頭に居る影に向かって狙いを定める
「外すなよ、放てっ!」
溜めた力を解放し4人での同時攻撃で1体を吹き飛ばした
「残り4体、囲まれないように気をつけて!」
再度全身に気を巡らせ手足を青白く光らせた咲が近接攻撃をしかけ、3人の小隊は援護に徹する
堅実かつ基本に忠実に2体目3体目と撃破していった
「残り2体、油断しないで!」
「「了解っ」」
懐に飛び込んだ咲は、肘から膝、そのままバックナックルを放ち勢いを殺さぬまま回転してハイキックを見舞う
吹き飛ばされたクラス3目掛けて3人の遠距離攻撃が追い打ちをかける
仰向けに倒れ込んだ所へ、飛び上がった咲が膝を落としトドメをさした
「あと一つっ!」
*****
「みんなさすがだの、弥一も張り切っとるわい
湊たちは楽しんどりゃせんかの?アレ……
咲の部隊は、あらかた片付いたの
相変わらず堅実な動きだわい
西側は……あそこだけ雨雲?こいつは……」
上空から戦況を見ていた玄真が見たのは
西門の外側にだけ発生し広がっていく暗雲だった
*****
「みんな!うちが合図したら一旦下がるんや!
颯太、気ぃつけや
まだ加減がわからん……めいっぱい行くで!」
そう言った時雨は、空中に浮いた水の塊を足場にして
両腕を上げて気を高めていた
「雲が厚くなっていく……」
「……よっしゃ、全員一時退避!
いっけぇーー!!」
時雨が腕を振り下ろすと、矢のような鋭い氷の粒が
広範囲の影の集団目掛けて降り注ぐ
「まだまだぁー!」
降る氷は勢いを増し、影たちに無数の穴を穿ち敵を一掃していった
時雨が一旦息をつくと、眼前にいたクラス1,2の集団は壊滅していた
「凄い……」「あれが時雨様の力?」「あんなの見たことないぞ」
西側に配備された部隊は、新しい時雨の力を目の当たりにし
口々に驚きの声をあげていた
「残りは奥のクラス3が……20体ほどやな
よし、半分ははこのまま北上して弥一さんの部隊の援護
残りはここで防衛線を維持!」
「「了解!」」
「颯太、クラス3はうちらで片付けるで!」
「わかった!サポート頼む!」
「任されたぁ!」
時雨は上空に張った雨雲を奥のクラス3の集団の方まで伸ばしていく
「はぁーーっ!」
全身に気を込め颯太は眩い光を纏う
走り出した颯太は背中から竜巻を発生させ、自身を押し出すように前方へ飛び出した
「考えたな、ならうちからのプレゼントや……突っ込めぇ!」
飛んでいく颯太の前方へ手をかざし、厚く張った雲から無数の落雷を発生させた
「よし、このまま一気に行く!」
その身に雷を浴びる度に力と速度を増していき
懐から引き抜いたナイフを構えて力を込めると
両手持ちの大剣のような形状へと変化した
颯太は急制動をかけ横1文字に大剣を薙ぎ払う
「でやぁーっ!」
振り抜いた剣圧は雷を纏い、前方の影10体ほどを巻き込みながら上半身と下半身を真っ二つに切り裂いた
「一撃で半分以上仕留めたか、やるね!」
「ふうっ、時雨のサポートのおかげだよ」
「うちの力はその為にあるんや、さぁもういっちょ行こか!」
「おう!」
*****
「クラス2もほぼ片付いたな、クラス3もあとわずか
もうひと踏ん張りじゃな……
皆の者!負傷者は後退させ防衛線を再構築せよ!
第2波に備えるのじゃ!」
号令を出した弥一は火の化身のように全身を燃えるような気で覆っていた
「西側の空がおかしい……あやつらの力か
頼もしい事よ」
西に意識を向けていた隙に襲いかかってきたクラス3に
一瞬反応が遅れたが、振り向いた時には影の姿は無く
弾けるように吹き飛んでいた
「気ぃ抜くんじゃねえぜ、弥一よう」
そこにいたのは、一足に距離を詰め腰を落とし肘打ちを放った団蔵だった
団蔵の体からはバチバチと光が走っている
「遅かったのう、紫電
もう少しでわしが全て食い散らす所だったぞ」
「よく言うぜ、まだ10体は残ってるじゃねえか
ちょっと休んでな、あとは俺がやる」
「はっ、おぬしにも華を持たせるとするか」
全身の火を収めた弥一は少し息が上がっていた
「よくもまあ老体に鞭打って20体も仕留めたもんだ
俺も負けてらんねえな!」
バチバチっと音を弾かせながら影の集団へと飛び込んでいく
小柄な体をクラス3の巨体の懐へと滑り込ませ
腰だめに構え右手を相手の腹部の寸前で止める
「はいぃっ!」
気を込めた掌打を放ち影を吹き飛ばした
一瞬動きを止めたところへ別の影が巨体から拳を打ち込むが、振り向きざま受け流し頭上に振り上げた裏拳を打ち下ろす
「そいやっ!」
モロに拳を受けた影は地面にめり込んで動きを止めた
「ふうむ、いかんなぁ……動きがなまってやがる
もう一段階上げていくか!」
全身に纏う雷を更に激しくたぎらせて地面が弾けた瞬間その姿を消した
文字通り目にも止まらない速さで影に突撃し
1体、また1体と蹴散らしていく
「紫電の団蔵はまだ健在じゃな……!?」
次々に弾ける地面と吹き飛ぶ影を見ていた弥一は
団蔵が戦っている更に奥、弥一は見慣れない異形の影の姿を捉えた
「一旦下がれ!団蔵!」
「!?」
声に反応した団蔵は弥一の元へと戻り奥の方へと注意を向けると、報告にあったクラス4の姿が見えた
「やはり来おったか!」
「なんて禍々しい気を発してやがる……
どうする?さすがに2人じゃ分が悪かろうて」
「玄真!他の状況はどうじゃ?」
上空から無線で報告を出す
「東、南はほぼ完了し北上中
西は部隊が先行して北上、時雨と颯太は敵主力と交戦中だがすぐに終わるだろうの」
「よし、北上中の部隊は今こちらに展開しておる部隊と交代させ後方にて待機
クラス4はわしらで時間を稼ぐゆえ主力の合流を急がせてくれ!」
「了解だの!」
玄真は全部隊へと回線を開き通達した
*****
「「!?」」
最後の1体を仕留めた時雨と颯太は報告を受け動揺を隠しきれなかった
「また奴が出たのか!?」
「でも前の奴は消えたはずや……て事は新しい奴が出たって事やな
あんなんが数出てきたら厄介や、早く弥一さんたちに合流せんと!」
「あぁ!今度こそ仕留める!」
もう誰も死なせたくない
そう強く思いながら2人は北へ向けて走り出した
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