第3章
第21話『闇の胎動 1』
訓練に明け暮れた夏休みも終わり
普段通りの学園生活を送りながら
増加傾向にある『影』の出現状況を鑑みて
段階的にではあるが、颯太も対応にあたるようになっていた
約3ヶ月の間、基本的には学園生活を優先しながら
時雨か咲どちらかの任務に帯同する形で
少しずつ、確実に実力を開花させていった
*****
「融合した能力の覚醒後から11月末までの出撃回数が7回
撃破数はクラス1が32体、クラス2が6体……クラス3が3体
…………上々の戦績じゃないか」
颯太の報告データファイルを見ながら灯弥が言う
「直近の動画ファイルです、ご覧になりますか?」
「あぁ、頼む」
調査研究班の職員がファイルを開いた
「ほう、まだそれ程経っていないが解放段階まで能力を高めたか……時雨との連携もよく取れているな
能力の検査結果はどうだ?」
「これまでの調査結果を総合しますと、やはり完全に別系統の能力として彼の中にある様です
『雷』『風』の両因子は検出されませんでした
現在『嵐』の力とされる能力因子の解析を進めています」
「やはり、異能の混血という過程だけでは発現し得ないという事か……適合率だけの問題では無い様だな
現段階までの報告書をまとめ、重要なデータは厳重にロックしそれ以外は廃棄しろ」
そう言い灯弥はその場を離れる
「私はこれから宝物殿へ向かう、重要な報告以外は朔弥にまわせ」
「かしこまりました」
*****
「颯太ぁ!そっち任せた!」
「おうっ!」
二手に別れた2人は敵集団へ突撃していく
颯太にとっては8度目の出撃だった
今回は今まで以上の規模の『影』の出現だったが
水の戦闘チーム計8人の部隊を加えた作戦で
近遠ともに4人ずつで編成され、後方援護とクラス1たちの掃討にあたっていたが
間近で見る颯太の力に驚きを隠せない様子だった
「ラストーっ!」
集団の最奥にいたクラス3を撃退した時雨は
2体のクラス2と交戦中の颯太へと視線を向ける
左右から次々と繰り出される攻撃をかいくぐりスピードで翻弄
時雨から貰ったバンテージを両拳に巻き
嵐の力を込めた鮮やかで的確なコンビネーションを叩き込む
難なく退けた颯太は時雨と合流する
「なんや颯太、クラス2程度じゃもう物足りんのとちゃうか」
「そんなことは無いよ、一度にあれ以上の数はまだ厳しいし
前回戦ったクラス3は危ない場面も多かった」
「クラス分けされてはいても、同じクラス3でも強さはピンキリやからなぁ
こないだのやつは、うちから見ても正直頭一つ抜けてたわ」
「あぁ、まだまだ鍛えないとな
でも最近、『影』が多くなってる気がするんだけど」
「せや、これまで以上に動きが活発化しとる
しかも以前よりクラス2と3の力も増しとるし、何かでかい事が起きる前兆のような気もするんよ」
「そういえばクラス3より上っているのか?」
「いや、見た事も聞いた事もないわ
群を抜いて強化されたクラス3てのは出現例があるけど
外見上や能力もほかのクラス3と違う訳でもないし
例が無いだけで存在はするんかも知れへん
もしいたとしてもどんなものか想像出来んけどな」
「そうか、もしいたとしたら恐ろしいな」
2人で話しているあいだほかの隊員は倒した『影』を1箇所に集め警戒態勢を取っている
本部からの迎えが到着し、『影』を収容した後
2人も車へ乗り込んだ
「颯太、さっきの話やけど……
どうも嫌な予感がするんや、もしかしたらホンマにおるんかも知れへんな」
「クラス3以上の『影』、か……」
*****
「慶一さん、最近の『影』の事について……どう見ますか?」
別の地区で『影』の掃討任務にあたっていた静は慶一に連絡をとっていた
「静ちゃんの考えてる通りかもしれないな
ここ最近のやつらの動きを見ると、あの時の事と重なる部分が多い
また……やつが出てくるかもしれん」
「…………はい、ですが……」
「あぁ、わかってる……もし出てきたとしても俺たちだけでケリをつける
時雨ちゃんには俺から話をつけておく
颯太には絶対に手を出させねえ」
「ありがとうございます、過去の因縁は必ず私たちの手で絶たなければなりません
ただ、あれからだいぶ経ちます
向こうも相応に強化されていると見て間違いありません
私たちもただではすまないでしょう」
「あぁ……そうだろうな
その事を踏まえても、俺たちで直接颯太の指導をしておいた方がいいんじゃないかな……今後のあいつのためにも」
「あの子の力は私たちとは異質で、潜在能力も未知数……
でもだからこそ、あの子の助けになるのなら
私の方からもお願いします」
「決まりだ、その件についても俺から時雨ちゃんに話しておくから」
「よろしくお願いします」
静は自分の悪い予想が当たらないように願うが
まず間違いないだろうと確信に近いものを感じていた
当時の当主たちが総掛かりで辛くも撃退した『影』
長年行方をくらましていた積年の相手
迫る危機に際し決意を新たにしていた
自らの力も今以上に高めておかなければならない……颯太を守るためにも
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