第18話『対話 2』
「私は元々、覚醒する見込みはありませんでした……」
静は過去を話し始める
颯太は、母親と名乗った目の前の女性の話をただ聞くしかなかった
「さっきの話にあったように、一族の者でも覚醒するかしないかは検査で判別出来るようになっていました
私は15歳の時に、覚醒する見込みがないと判明しました
私はその時の当主の娘……当主の血を引く者が覚醒しないことも希にですがあったのです
ですが父はその事を受け入れることが出来ず、私は勘当されてしまったのです
当主を継ぐ条件……と言うのは聞いていますか?」
「はい……一族の中で1番力の強い人が継ぐと聞きました」
「そうです、ですがそれだけではありません
ここに祀られている『陰陽玉』との対話の後に認められた者しか継ぐことを許されません
勿論私の他に候補となる者はいましたが、その条件をクリアできる者がおらず父がその後も当主を続けました
……私と慶二さんが一緒になったのは、私が勘当されたあとの事です
私は正直、内心はこれでいいと思っていました
私たちは想いあっていましたが、次期当主同士が一緒になれるはずもありませんでしたから
祝福された結婚では無かったけれど……私たちは幸せでした」
「でも、あなたはその後……俺を産んだ後に覚醒したんですよね?」
「はい……ちょうど20歳の時でした
私たちが住んでいた所の近くで『影』が発生しました
他の地域でも数体のクラス3が確認されており、各一族もその対応に追われていました
慶二さんもクラス3の対応に追われ、手薄になっていた未能力者の居住区へとクラス2の侵入を許してしまったのです
私があなたを抱いて避難しようと外へ出るとそのクラス2が迫っていました……
その時でした、私が覚醒したのは……」
「それって、俺を守る為に……ですか?」
「かも……しれませんね
私も必死でしたから、その力で撃退できたのまでは良かったのですが
その後のことを考えると同時に絶望もしました
私が覚醒した以上、あなたも将来覚醒する可能性がある
しかも両親が当主の血を継ぐ者……その2人の血を引く者がどのような力を持つか
組織の者がそれを容認するとは到底思えなかったのです、最悪の場合……」
言葉に詰まる静、その先は颯太でも想像することが出来た
「俺は殺されるかもしれなかったって事ですか?」
「…………その通りです……
それを恐れた私は慶二さんと相談して、当時の当主たちを説得し
あなたに封印を施して外へ出すことにしたんです」
「封印?」
「一族には昔から、罪を犯したりしたものに対して
その者の能力を封じてきたのです
あなたを殺させないためには、それしか方法が無かった
封印を施した後に、多数の能力者がいる環境で能力が刺激されるのを避ける為にあなたを外へ出したという事です」
「それで父さんはあまり家にいなかったんですね……
でも俺は実際覚醒した訳ですし、なぜ俺はまだ生きているんですか?」
「1つは、『陰陽玉』との対話のためです」
「えっ!?ちょっと……あまりにもな話でアレですけど
それって当主になるための条件て、さっき言ってましたよね?
今まで放り出しておいて、それは勝手じゃありませんか
第一俺にそんなつもりもないし」
「そうではないのです、今回の対話の目的は
あなたの資質を確かめるためと、今後我らと共に『陰陽玉』を守護する者としての運命を受け入れるのかどうかを確かめるため……
もし『陰陽玉』に認められれば、あなたに施された封印が解かれます
その後2つの能力が均衡が取れるのか、混ざりあってひとつになるのかはわかりませんが
暴走する事はなくなるでしょう
認められ無かった場合、あなたの中の能力の均衡が崩れいずれ暴走する可能性が限りなく高い事になります
その場合と、我々と相容れない場合には
封印を強化し能力を発現できないようにした上で
……我々の監視下で非能力者として居住区で暮らしてもらうことになります」
「……それは俺を閉じ込めておく……という事ですか?」
「あなたを殺さずに済ませるには、これしかありませんでした……
これはあなたを外に出すにあたり、当時の当主会議であなたのおじい様にあたる先々代の当主、私の父、時雨さんのお父様3人の進言で決められた事なのです
これがもう1つの理由……
誰もあなたを殺す事は良しとしませんでしたが
このことを知る一部の者を納得させるにはこれしか無かった」
「俺を守る為に…………」
颯太は静かに目を閉じた
これまでの人生を、生活を、父の事を思い出す
「静さん……全てを納得出来たわけじゃありません」
静は颯太の辛さを、過酷な運命を、それをさせてしまう愚かな自分を許さなくてもいい
颯太が決めた事を受け入れようと決めていた
颯太が自分を憎んだとしても、拒絶したとしても……
「ですが、俺の過去と今の状況は理解しました
父さんやみんなのおかげで今の俺があるとも思います
………………でも…………
俺はあなたの事をまだお母さんとは呼べません………」
「それはわかっています、気に病まないで……
それで、どうしますか?」
「どうなるかわかりませんが、やってみます
そのうえで、俺の意思でこの先の事を決めます」
「ありがとう……あなたの意志を尊重します」
静はそう言うと部屋の扉を開き、外で待っていた3人を中へと招き入れた
静の様子から察した灯弥が言う
「日比谷颯太、君の賢明な判断に感謝する」
慶一と時雨は何も言わなかった
颯太も何も言わ無かった、どうするかはもう決めている
「さぁ始めよう、神との対話を……」
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