世界の始まり、全てはここから


 雨は降っていない空、その下でランダムフィールド・パルクールは始まった。

他プレイヤーへの妨害はペナルティの対象と言う事もあって、誰も攻める事はないのだが――ギャラリーは、それを退屈とは思わない。

何故かと言えばランナーのコスチュームだけでもインパクトがあり、更に十人十色のアクションは人々を魅了する。

だからこそ――ランダムフィールド・パルクールは草加市内で広まりを見せていたのは間違いない。

ただし、稼働しているエリアは一部に限定されているのが唯一の何点であり、草加市としては何とか広められないか交渉をしていた。

交渉に関しては上手くいっていない話が聞かれているのに加え、ランダムフィールドの運営側が難色を示している。

「ランスロットがリードと言った所か」

「どちらにしても――」

 ギャラリーはランスロットが有利と考えている。

「あのレーヴァテインが、ランダムフィールドに姿を見せるとは」

「出るとしたら、ヒーローバトル系のARゲームだろ?」

 一方でレーヴァテインに関してツッコミを入れる超えるもあるのだが――プレイスタイルに言及する声はない。

ツッコミが無駄だと考えるギャラリーが多いのかもしれないが、おそらくは違う理由だろう。

「始まった当時は批判的な意見が多かった――」

「しかし、それを変えたのが三笠だったな」

 批判的な意見が存在したのは、どのARゲームでも同じである。

逆に批判的な意見が出なかったARゲームは、あった方がおかしいという話はネット上にも広まっていた。

しかし、必要以上の議論は歪んだ発言等によって炎上し、サービス終了等に追い込まれる危険性さえあるだろう。

【コンテンツ流通にネット炎上は不要であること、その意味を――彼らは知る】

 その時だった。謎のメッセージが拡散したのは――。メッセージの投稿者は不明、匿名説や陰謀説などもあった。

挙句の果てにはテロリストの仕業やハッカーによる宣戦布告と言う説まで拡散したのである。まるで、ネタにマジレス状態だ。

 結局、その人物を突きとめる事が出来る人物は存在せず――半年は経過した。

ロケテストを経て、正式稼働予定までに持ち込むが――最終的にサービスインする事無く、ランダムフィールド・パルクールは終了する。

サービスイン直前に中止発表があった訳ではない。様々な憶測が存在するのだが――それを知っても意味はないと考えるプレイヤーが多かった。

事前登録などの段階でプレイヤー数が集まらなかった為のサービス中止である。ネット上でも、これで決まりとされていた。

「三笠――お前は、一体どこで道を誤ったのか」

 大型モニターでレースの状況を見ていたフレスヴェルクは――途中からは別の場所へ向かう為、ポケットに仕舞っていたタブレット端末で音声だけを確認する。

この手の動画は音だけで追うのは難しく、実況を追加した実況動画なども人気なのだが――リアルタイムでは実況を入れていないケースが多く、第3者が実況を入れるケースも稀にあった。

そう言った実況を嫌うような人物もいるが、それはARゲームの実況を一般的なゲーム実況と同じ感覚で語っている少数派にすぎない。

あくまでもARゲームでは、ゲーム実況と言うよりもスポーツにおける実況と立ち位置が似ているのだ。



 6人のプレイヤーは、それぞれに違うゴールを目指す訳ではない。ゴール地点は1つしかないのだ。

ルートは通行禁止エリア以外を使うのは自由、逆走禁止を守れば――どのコースを使うのもプレイヤーにゆだねられる。

左側通行が必須とされるコースは左側通行が強制される、トンネルの車高制限――ARガジェットも一種の自動車と同じ扱いとされていた。

特殊車両と言う概念でロボットが存在した創作もあるのだが、これほどとは――と西雲春南(にしぐも・はるな)は思いながら、コースを突き進む。

直線コースばかりを進んでいるような気配はする。しかし、ナビで表示されたコースに間違いはない。ナビに細工をして危険なコースへ相手を誘導するのはチート以前に不正行為だ。

(左側に見えるのは――鉄道の高架下か)

 西雲は左側をARバイザーのナビで高架下と認識し、別のルートを考えていたのだが――禁止ルートなので使えない。

電車の鉄道を利用してショートカットをすれば、先頭グループを補足するのも――。しかし、線路を使うのは危険なルートに変わりないだろう。

パルクールの動画でも駅で撮影されたようなルートを走る動画も存在しない訳ではないが、電車に衝突でもしたら大事故では済まない。

夕方のニュースでもトップで扱われ、それこそネット炎上は明白だ。ネタにマジレスと言うレベルでは済まないのである。

『どうやって逆転をするべきなのか――』

 西雲は視線で各種アイコンを確認するのだが、それっぽい逆転の鍵は見つからない。簡単に見つかってはゲームとしても面白みが薄れる。

それこそ、WEB小説におけるご都合主義とかデウス・エクス・マキナの様な展開――読者が白ける可能性が高いのは言うまでもない。

ARゲームでは不正なツールやチートは禁止されている。だからこそ、あのガジェットに何か秘密があると西雲は考えていた。

『ヘルプアイコン――?』

 目の前に表示されたのは、ヘルプアイコンである。四角形にハテナマークと言う分かりやすいマークが自分の目の前に表示されていた。

しかし、どうやって触るべきなのか――と右手をアイコンに触れたと同時にメッセージが表示される。

【ヒューマノイドモードに関する説明】

 そこに書かれていた項目の一つ、それはパルクール・ガジェットの機能に関する解説だった。

【このモードを使いこなせれば、形勢逆転も夢ではない――】

 慌てていた西雲は、そこに書かれていた一文を新いる事にしたのである。

その文章には続きがある事に、この段階では全く気付いていない。チートや不正ツールの類ではなく、問題のないモードである事はチェックしたが――。

『ヒューマノイドモードを使う為には、特定のキーワードを叫ぶかモードのアイコンをタッチする必要性が――』

 西雲はタッチするべきアイコンを探すが、それらしきものは存在しなかった。あるいは、探すのを途中であきらめたのか?

そして、あるテキストメッセージがARバイザーの目の前に表示され――。

『アカシックレコード、アクセス!!』

 西雲の叫びと共に、自分が乗っていたボードが青く輝きだした。

そして、輝きだしたクリスタルは変形と分離を繰り返し、人型に変形をしたのである。これには西雲も困惑し――。

最終的にはパワードスーツを思わせるような形態に変形し、その後にARバイザーには何かのタイムリミットが刻まれ始めていた。

《ヒューマノイドモード、システム解除まで残り5分》

 この5分を、西雲はゴールまでのタイムリミットと勘違いした事が――想定外の流れを生み出すきっかけとなった。

システム解除がアーマーの機能停止と思いこみ、ガジェットの停止は失格になると考えていた事も理由の一つである。


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