かわいそう


 新聞記者たちが聖戦士フリックを追っかけまわす最中、野次馬ばかりが多くなり、肝心の勇者は全然訪ねてはこなかった。


「可哀そうなフリックさん」


 テレサさんがそうしきりにつぶやくが、彼の哀しそうな瞳は、全て彼女であろうことは言うまでもない事実である。


 そんな中、ギルド内でも動きがあった。


 まずは、武道家リドラーの復帰。


「よくぞ……よくぞ戻ってきてくれた」


 思わず会うたびに、涙が出てしまう。


「またまたぁ! マギさんは大げさだなぁ」


「なにを言っているんだ。こんなロクでもない奴らしかいないギルドの中で、お前は俺の救世主だよ」


「そんな……まあ、ニーナ以外は変わった子が多いのは事実ですけど」


「……」


 あいつが一番ロクでもないのだけれど。


 むしろ、どこに惚れたんだとツッコみたい気持ちだ。


「ところでさっき公募クエストがあったんだけど、リドラー引き受けてくれな――「私、やりたい」


 !?


「レ、レ、レイちゃん……これは、捕獲系のお仕事だから。殺すことはできないんだよ?」


「殺さず……できるもん」


 嘘つけ!


「まあ、いいじゃないですか。僕もついていきますから」


 !?


「り、リドラー、お前この前……」


 半殺しの目に遭って、全治2カ月だったじゃないか。


「まあ、見ててくださいよ。前は、原因不明の事故に遭って、クエスト失敗しましたけど、今回は立派にサポート役を務めてみせます」


「げ、原因不明の……お前……あの時のこと覚えていないのか?」


「それが、お恥ずかしながら。レイちゃんと敵に対峙したところまでは覚えているんですが」


 き、記憶喪失……だとっ!


「リドラー……大変言いにくいんだが、お前はレイちゃんに半殺しにされて入院したんだ」


「またまたぁ!」


「本当だよ! お前、今度も行ったら、また同じように半殺しにされて……いや、今度こそ殺されるかも」


「ははは、マギさんはジョークが好きだなぁ。レイちゃん、そんなことしないよね」


 コクリ。


 って嘘つけ!


「とにかく、吉報を期待していてください」


 そう言い残して、リドラーはレイちゃんをミッションに向かった。
















 結果から言うと、以下、同文の展開だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る