捜索
聖戦士フリックさんの『迷子』依頼を受諾。最初、誇り高げに話していた彼は、テレサさんの一言に顔を真っ赤にして、最終的には泣きそうな声で、「……まぁ……そうかな」とか言ってて、すごく可哀想であった。
しかし、何はともあれ依頼。
「ニーナ、レイ、テレサさん、仕事だ!」
「「「……」」」
「お、おい。仕事だぞ!」
「「「……」」」
こいつら……完全に無視してやがる。
「レイ!」
「……勇者……殺してもいいなら」
「悪かった! お前は探さなくていい! ニーナ!」
「ごめん、マギ。私、めんどくさい系ダメなんだわ」
「……お前に期待した俺を、今、全力で殴ってやりたいよ!」
そう言った瞬間、レイが俺に飛びかかってマウントを取り、拳の弾幕を浴びせる。
……弾弾弾弾弾弾弾!
数分後、テレサさんの魔法で目が覚めた。
「な、なにが起こった!?」
「よかったー、マー君。あなた、レイちゃんにボコボコにされて気絶してたのよ」
「……レイ、なんでそんなことするんだ?」
「だって……殴りたいって……」
「比喩だわ!」
当たり前だろ! しかも、一発だ! マウント取ってボコボコじゃないんだよ!
「……ごめんなさい」
申し訳なさそうに、
上目がちに、
美少女が謝る。
「……っ」
殺人的に可愛い。
危険だ……この娘に今後撲殺されたとしても、許してしまいそうな自分が怖い。
「そ、そんなことより! 迷子、迷子の聖戦士フリックさんのことだ! テレサさん!」
「えっと……洗濯とお料理、掃除があるし……」
「優先順位!」
ありがたいけど! ありがたいのだけれど!
「……そうか、お前たちは断固働かないというんだな?」
「「「……」」」
こ、こいつら腐ってやがる。性根が腐りきってやがる。
「お前ら、もうクビーーーー「あっ、そーだ!」
解雇宣告を言い渡す直前、テレサさんがパンと手を鳴らす。
「やってくれますか?」
「ええ、ちょっと私、知り合いがいるんです! その人に頼めば」
そ、そんなツテが……流石は大聖女。
「お願いします!」
聖戦士フリックさんも深々と頭を下げる。
「ええ、きっと見つかりますよ。あなたに神のご加護がありますように」
聖母の笑顔を浮かべて、テレサさんは聖戦士フリックの頭をナデナデした。
「ありがとうございます」
気のせいだろうか……彼女の優しさに聖戦士フリックは、頬に一筋光るものが……ここまで、いろいろ大変だったんだろうな。
翌日、
『聖戦士フリック迷子! 勇者とはぐれて号泣』
と大陸一の新聞社の一面を飾った。
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