報酬
またしてもテレサさんに心の傷、トラウマを負わされるという精神的外傷はあったが、問題なく懸賞金を持って帰ってきた聖騎士フリックご一行。
「フフフ……これだけあれば……」
大量のレル札を眺めながら、笑いがニマニマ止まらない。このクソギルド員たちも、半年は養っていけるお金じゃないだろうか。
「また、マギが横取りすんのー?」
二日酔いから回復したニーナが口を挟むが、それに関しては異論を認めない。なぜなら、それが契約だからだ。ギルド員がこなした仕事の7割をマージンとしてもらう。それは、ギルド長である俺の権利である。
だいたい、ニーナやレイ、テレサさんに蝕みつくされた心と比べれば、少なすぎる報酬であるぐらいだ。
「今夜はご馳走ね、ウフフ」
テレサさんも腕まくりをして、ウキウキ顔で料理を始める。
「あ、あの……」
「? なんですか、フリックさん。も、もしかして報酬の折半を!? しませんよ、だって、倒したのはレイとニーナじゃないですか!」
「い、いえ! 異論を挟む気は全くありません。ただ……正式に、仕事の依頼をしたくて」
「仕事ですか!?」
こ、幸運が舞い降りてきた。
「はい! あなたたちの実力を見込んで! ぜひ」
……俺が全然見込んでないのに。
「まあ、お金さえくれれば、大抵のことはやりますよ」
そう答えると、フリックさんは安心したように、状況を話し出す。
「実は、俺は勇者アテレス率いるパーティーの一人の聖戦士なんです。アテレス一向とは、セーザスの森で『ラーの泉』を捜索している時に、はぐれてしまいまして。そして、不運にも魔王軍に囚われてしまいました。しかし、隙を見て牢を抜けて逃亡、途中、弟の死などもありましたが、なんとかここまでたどり着いて。しかし、魔王軍の宝である宝珠もドサクサに紛れて盗んできました」
「は、はぁ……」
えっと……大変な目に遭ったと。
「それで、この宝珠を使って勇者の盾を作れば、史上最強の盾が手に入るはずなんですが、勇者の動向が掴めない。俺の身体も、まだ完治にはほど遠い状況ですし、ちょうどギルドに依頼しようとしていたところなんです。これは、まさしく天祐ですよ」
「なる……ほど」
じゃあ、依頼内容は勇者の捜索……でいいのか。
そんな中、料理をしながら聞き耳を立てていた耳年増テレサさんから声が飛んできた。
「要するに……迷子ってことかしら?」
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