激闘
とは言え、手詰まり感が出てきた狂戦士レイ。武器を使わないともなれば、このままいけば、確実に負ける。
「仕方ない……可愛い妹分のために、一肌脱ぐか」
ニーナがそう言って、立ち上がる。
ひ、久々にやる気になっている。いい傾向だ。
……ん?
!?
「どあああああああああっ! 本当に服を脱ぐんじゃねぇえええええええええ―――――――――!」
「キャハハハハ、一肌脱ぐって言ったじゃない。キャハハハハ」
……この酔っ払いがぁ!
「さて……マギへの性的サービスも終わったとして……」
「俺が望んでるみたくいうな」
……ブラはピンク……か。
ニーナは剣と酒を持ってフラフラと歩き出す。
「ん? なんだ、貴様もやるの――っく!」
ブルーオークが話し終える前に、すでにその剣が首元にあった。そのまま、つけば確実に喉を貫いていた。
「ほら、死んだぁ」
陽気に。
あっけらかんと。
ニーナは笑いながら答える。
「くっ……余裕のつもりか。このチャンスを逃したら二度とはないぞおおおおおおおおおおおおおっ!」
剣を払いのけて、猛然とニーナに襲いかかるブルーオーク。しかし、そんな猛攻をヒラヒラと躱し、次々と剣を突き立てていく。
「ほら、死んだぁ。死んだぁ。死んだぁ。死んだぁ。ほら、死んだぁ」
繰り出される剣は寸止めではあるが、いずれもブルーオークの急所を捉える。
まるで、
元からそこに存在したかのように。
やはり、才能だけはある。そう確信した。日頃の怠惰な生活で速さが失われても、その不規則な動きは容易に敵を捉える。惜しすぎる天才。残念すぎる麒麟児。それが、ニーナと言うアル厨である。
「くっ……余裕のつもりか!? なぜ、寸止めをする……」
「……んくっ、んくっ……ぷはぁ!」
ブルーオークの問いかけに、ビールの一気飲みで答える。獣人はその屈辱にプルプルと震える。敵の身ではあるけれど、かなり、可愛そうで、大いに同情できる。
「くっそぉ! ふざけるなあああああっ!」
怒りに任せてニーナに捕まえにかかる。
が。
その腕はバツの字の残像と共に吹き飛ばされた。
「ぐわあああああああああっ!」
その叫び声と共に。
血飛沫が舞い、
ブルーオークが、片膝をつく。
「……うまい」
不本意にも、声が漏れる。
実際、ニーナも非力でブルーオークの身体に致命傷を与える剣撃を与えることはできない。だから、余裕のあるフリをして、獣人を挑発。力が入ったところで、最高速度の斬撃を硬くなった筋肉に浴びせる。まるで、大根を斬るかのように、ニーナは容易にそれをやってのけた。
「う……うろろろろろろろ……」
……ゲロ?
「ゔっーーーー、気持ち悪い。もーいーや、私、帰るね。あと、よろしく」
そう言って、ニーナはいそいそと部屋に戻っていく。
「お、おい!」
聖騎士フリックが呼び止めようとするが、無視。
……そーだ、お前は人格最低の天才だったな。
「うおおおおおおおおおっ」
一方。
ブルーオークはというと、レイにマウント取られて再びタコ殴り。両手を斬られて起き上がる術も失った獣人はひたすら殴られるままである。
「があああああっ……ごめっ……まいっ……許してぇ!」
命乞いを始めるブルーオークに、至福の表情を浮かべながら拳を止めないレイ。
それから、レイは1時間。拳が壊れるまで殴り続けた。
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