激闘


 ブルーオークが突進し、テレサさんに殴りかかるところ、レイが横から飛び蹴りを喰らわす。吹き飛んだ獣人は、壁に激突し、大きな風穴を開ける。


「グ、グググ……貴様ぁああああああああああ!」


 叫びながら咆哮をあげる間に、距離を詰めて拳の散弾を浴びせる。


 弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾だだだだだだだだだだだだだだ―――――っ!


 ブルーオークの顔が右へ左へ上へ下へと吹き飛ばされる。


「す、凄い……なんだあの子は……」


 聖戦士フリックが目を見開いて唸る。


「……まあまあかな」


 ニーナが、物知り顔で、頷く。


 なんなんだ、お前は。


何目線だいったい。


「調子にのるなあああああああああっ!」


 獣人が腕を掴み、力いっぱい投げるが、レイは猫のように身を翻して、地面に着地する。


 現時点の状況では狂戦士が有利。


 しかし……


「まずいな」


 思わずつぶやく。


「ええ、全く」


 ニーナも同意。


「な、なぜだ? あれだけ彼女が押しているじゃないか?」


 フリックがこちらを見る。


「確かに、レイの方が早さも技も上だ。しかし、ブルーオークにダメージを与えられていない。相当なタフネスが、あの獣人にはある」


 先日のクエストでは低級のモンスターしか相手にしていなかったから、その非力は気にならなかったが。この獣人は明らかにB級以上の力量がある。そんな相手には、有効な打撃は与えられないだろう。


「……とすると、やはり締め技かしらね」


 ニーナがビールを飲みながらつぶやく。


 ……黙ってろ、酔っぱらい。


しかし、その酔っ払いの言葉を聞くかのように、レイはブルーオークを投げ、そのまま四方固めを決める。


「……うがぁ!」


が、


力任せに腕を振りほどかれ、そのまま肘打ちを。かろうじて躱したレイは数歩獣人から距離を取る。


その戦闘センス、速さともに天賦の才を持つが、惜しむらくはその非力。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


レイの息が上がってきた。


「……武器は使わないのか?」


力を補うための最も効率的な方法。例えば、ナイフ1本でも。彼女にとっては有効な武器になるだろう。


「はぁ……はぁ……それだと、殴る感触が味わえない……」


「……」
















恐ろしい子っ!

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