手下


 ブルーオーク。青い毛並みを持った獣人族。その格闘能力は非常に高く、大岩すら一撃で穴を空けられると言われる。魔王の手下とされている凶暴な種族である。


「くっ……不覚。急いでいたのに……朝ご飯など食べていたから」


 戦士が、ポソッと、漏らした。


「えっ……」


 哀しそうな表情を浮かべるテレサさん。


「ちょあんた! なに、人のせいにしようとしてんのよ!? あんたがハッキリ言わないからでしょう?」


 そして噛みつくニーナ。


「な、なんだと!?」


「あんたが追われてるなんてこと私たちが知れるわけないでしょう? 私たちは超能力者ですか? 大事なことは言葉に言わないと伝わらないんですよ?」


 ま、まあまあ急いでたオーラは出していたと思うが。


「ぐぎ……ぐぎぎぎぎぎぎ……」


 歯を食いしばりながら。名もなき戦士は、魔王に向ける殺意をニーナに向ける。


「ぐすっ……ニーナちゃん。庇ってくれて優しい子」


 なでなで。


「エヘヘ……いい子いい子してもらっちゃったぁ」


あ、朝から完全に酔っ払ってやがる……からみ酒で、情緒不安定なんて、最悪じゃねぇか。


「あの……ごめんなさい、続けてください」


 こんな奴らのことは気にせずに。


 本題の方に。


「フハハハハ、ようやく追いついたぞ、フリック……いや、聖戦士フリック=ガストイン。宝珠は返してもらうぞ!」


 ブルーオークは、高笑いを浮かべる。


 ……あの人、フリックって言うのか。


「くっ……これは、渡すわけにはいかない。これは、弟が命がけでお前たちの城から持ってきた希望。それを……こんなところで……」


「ククク……しかし、お前にこの俺と戦う力は残っているかな?」


「くっ……」


 確かに。


 見るところによると、テレサんさんの蘇生魔法で回復したと言えど、万全ではない。死の淵から蘇ったのだから、当然、身体にもガタがきているだろう。


 チラッ。


 ん……今、こちらの方を、チラッと見たような――気のせいかな、うん気のせいだろう。


「……」


「あっ、続けてください」


 僕らは、気にせずに。


 会話の節々から、彼らが勇者勢と魔王軍勢であることがわかった。


 世界に分類はいくつかあると思うが、勇者勢、魔王軍勢、その他大勢と分けられるのは、ごく一般的だろうか。互いに相容れず、争いを繰り返す、正義と悪について真面目な過激派、いわゆるガチ勢が勇者勢と魔王勢。いわば、主役、脇役である。そして、メインキャストを張れず、日々生活のためにクエストなどをこなすのが、その他大勢。


 もちろん、俺たちは、その他大勢にあたる。


「くっ……この傷さえ治っていれば、お前など……」


「フハハハハハハハハ、観念するんだな聖戦士フリック」


 なんか……盛り上がってきたな。


 チラッ、チラッ、チラッ、チラッ、チラッ。













 めっちゃこっち見てる――――――――――!

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