報酬


その日、コバルト貴族カンカンさんのクエスト達成のお祝いが催された。


「さぁ、今日はクエスト達成記念のお祝いよ」「うっわー、凄いご馳走。いただきまーす」「……美味しい」「ふふっ……腕によりをかけて作った甲斐があったわ」「ビールもワインも今日は飲み放題だね」「……このお肉、美味」「もう、ニーナちゃんもレイちゃんもお酒の飲み過ぎ、食べ過ぎには気をつけてね」「「はーい」」


「……」


俺のことを尻目に、ドンチャンドンチャン、楽しそうな宴が、開かれている。


「あらっ、マー君は食べないの?もしかして、お口に合わないかしら?嫌いなものある?」


「い、いや……そう言う事では……」


3日間飲まず食わずで探して、正直、飢餓状態ではあるが、なんだろう……凄く食べづらい。


話を聞くところによると、迷い犬バウは、お腹が減っていたらしく、食べ物の匂いに釣られてフラフラと出てきたと言う。


実に、俺が探しに行って30分後の出来事だったそうだ。


瞬殺同然の発見劇に、当然ながら飼い主のカンカンさんは狂喜し、特別ボーナスを3人に振る舞い、自らの豪邸に招いて大掛かりなもてなした。一方、俺は3人のギルド員の狂気に激怒し、飲まず食わずで、意地になって、山林にまで捜索の手を伸ばしていた。


そんな具合で、すっごく食べづらくて、今にも自害したい状況では、ある。


「……美味しいよ?」


レイも可愛らしく、首を傾げて、俺に料理を進めてくれる。


「……」


「そーよそーよ。冷めないうちに、食べないともったいないわよこんな美味しいもの」


に、ニーナ……お前って、案外、いい奴だったんだな。


「そ、そうか?ま、まぁどうしてもと言うのなら食べてやらんこともないけど」


強がりを言いながら、マルマル鳥の唐揚げに手を伸ばす。そうだよ、結果こそ出なかったものの、俺だって必死に探したんだ。食べる権利はあるはずだよ。


クスクス。


!?


「今……誰か、笑ったか?」


「「「いーえ」」」


き、気のせいか。


クスクス、クスクス。


!?


瞬時に3人の方向を向くが、みんな、知らん顔。


「どーしたの?」


ニーナが不思議そうな顔を浮かべる。


「い、いや」


そうだ……気のせいだよ。神経過敏になってるだけだ。あいつらは、そんな底意地の悪い奴らじゃーー


「よく食べれるわよねー」「ニーナちゃん、そんなこと言うもんじゃないわよ、めっ」「だってだって、あいつクエスト達成した時には手柄独り占めだぁって言ってたのに、言ってたわよね、レイ」「……うん」「まぁまぁ、マー君だって色々あるのよ」「いろいろって、あいつのやることなんてエロ本買って妄想繰り広げてるだけじゃない」「男の子にはそう言う時期があるのよ」


め、めちゃめちゃ大っぴらに陰口叩かれてる。しかも……酷い。


「だぁ!お前らいい加減にしろよ!たまたま上手くクエスト達成できたからって調子にのるなよ!」


特にニーナ。と言うか、ニーナ、お前だ!


「なによ、そんなこと言ってると報酬分けてあげないわよ!」


「いるかこんな腐った報酬!」


「あー、言ったわね!誓っていらないのね!?」


「いるわけねーだろクソアル厨がぁ!」


「「ふんっ!」」














翌日、借金取りがきて、土下座して報酬を分けてもらった。


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