陽が出て、小鳥の鳴き声がする。


 チュルッチュルッ、チュルルルルルル。


 変な声でなく鳥が住みついて、朝から寝覚めが悪い。眠気はまだあるのだが、目が開いてこない。身体をなんとか動かして、眠気を吹き飛ばそうとした時。


 フニ。


 ……なんだろうか、生暖かい感触が掌にに当たる。嫌な感触ではなく、マシュマロのような柔らかさ。


 恐る恐る目を開けると、そこには聖母テレサさんの顔があった。距離としたら十数センチ、フェイストゥフェイス。その薄く桃色の唇がうっすらと開き、はく息が少し暖かく感じられる。


 な、何事!? ナニがどうなっていますか。


 彼女の首の下を見ると、シャツ一枚。豊満で柔らかな胸は見事な谷間で山頂がギリギリ見えないラインで納められており、俺の掌にパンツ一枚の魅力的なヒップがおさまっている。理性と言う壁が一瞬にして、ガラガラと崩れていくのを感じ、目が美しい顔から離せない。


「んんっ……マー君」


 声が近いのが、ここぞとばかりに胸の鼓動を大きく波打たせる。もう、頭がボーッとするどころではなく、身体が本能に操られている。


「テレサさん……」


 顔がどんどん近づいて、その唇が――


「マー君……ダメよ。それは、飼葉よ……あなたは馬じゃないでしょ? 四つん這いで貪ろうとしないで、食卓でママ特製グリーンサラダを食べなさい?」


 ど、どんな夢!?


「て、テレサさん! あんたいい加減に――」


「フフッ……よくできました」


 そう言って、彼女は両腕を俺の首に回す。頬と頬が触れ、胸板に彼女の胸がギュッと密着する。その甘い匂いと、柔らかな感触で、もうすでに身体は本能に支配されたというより、我が身体こそが本能と言わんばかりだった。


「テレサさん……俺……もう……」


「でもね……それは、グリーンサラダじゃなくて、エスカルゴまいまいの殻よ。食感も触感も味覚も外観も全部違うでしょう? ママ、何度も教えたじゃない。フフフ……」


 ゆ、夢の中の俺のポンコツ具合たるや!


 その時、俺の部屋の扉が開いた。


「マギ……朝……」


 レイだった。


「いや……その……聞いてくれ、ちが――」


                    ・・・


「はっ! マー君……どうしたの?」


 目を覚ました聖母は大きく伸びをして、ボロボロの俺に首を傾げる。


「……いえ」


 ただ、狂戦士の娘に半殺しの目に遭っただけです。


「もう! ママあれだけ止めたのに。仕方のない子ね……逆立ちでアウアウ鳴いて帆立の貝柱を舌でキャッチしようとするからそうなるのよ」


















 なに、その夢!?


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