探し物2
テレサさんが再びカラカラさんの治療を完了した後、事件の現場に向かった。場所は、富裕層が多く住むレバーニ地区のお散歩コースの公園である。
「フムフム……ここで、犯人は飼い犬が連れ去られた訳ですね」
ニーナが、探偵気取りで、顎に右手を当てる。
「いや、まだ連れ去られたかどうかもわからないんだがな」
「マギ、甘いよ。使用人と飼い主がいる中で、飼い犬が逃げるのに気づかないと思う?」
た、確かに。
「それが……使用人と縄の締め方についてのディベートをしてまして、1時間ほどは、目を離していまして……まぁ、鼻の方が利くんですがね。ワンワンワンワンワンワン」
「「「……」」」
彼の犬ジョークは、一向に、理解不能だ。
で、カラカラさんのお話によると、それが、2日前の話。いつもなら、晩ご飯時になれば帰ってきていたそうだが、一向に帰ってこなかったらしい。
「もう、心配で心配で。私、飯も喉を通らないぐらいなんです。まぁ、骨は毎晩しゃぶってますがね! ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン」
この人……本当に飼い犬の心配をしているのだろうか。
「とは言え、これと言った、手がかりなしかぁ。みんな、どうする?」
「「「……」」」
みな、一様に沈黙。哀しいほどに役立たずである。
まぁ、仕方がないと言えば仕方がないことだが。そもそも、こう言った探し物の依頼が来ることは滅多にない。他のギルドでも断られたのも、納得がいく。
「あっ!」
「なにか閃きましたかテレサさん!」
「鍵、ちゃんと閉めたかしら……」
ママか!
「みんな、もう少し頑張って考えてくれよ! このギルドの存続がかかってるんだから」
「……あっ、そうだった!」
「さすがはテレサさん! なにかいい作戦が?」
「お弁当持ってきたんだったわ! いい天気だし、ここで食べちゃいましょう」
ママか!
「さっすがテレサさん! ワインある?」「もちろん、用意しましたよ。あんまり飲み過ぎないようにね」「はーい」「レイちゃんの好きな、タイラーの包み焼きもあるわよ」「……食べる」「もう、照屋さんなんだからレイちゃんは」「そうよそうよ、こんなにもいい天気なんだから。楽しまなきゃ損でしょ損」「はいはい、二人とも。ここに座って……はい、召し上がれ」「いただきまーす」「……っただきます」「はい、よくできました」
ぴ、ピクニック始めやがった。
「……お前ら、ふざけるなよ」
仕事をなんだと思ってるんだ。
「「「……」」」
む、無視……テレサさんに至っては、鼻歌交じりにコーヒー淹れてる。
「もういい! 俺が探す! お前らには当然ながら、報酬は渡さんからな!」
「この若鳥の唐揚げサイコーじゃない?ビールに合うわぁ」「ウフフ、ニーナちゃんに喜んでもらえて嬉しい。あっ、レイちゃんニンジン食べなきゃダメよ」「……好きじゃない」「ダメよ、好き嫌いしてたらロクな大人にならないわよ」「……はーい」
か、完全に団らんしてやがる。
「お前らの気持ちはよくわかった。いいか、俺、1人で探す! 報酬は俺だけが貰うからなぁ」
大事な事だから、二度言った。いわく、お前ら、引き止めるなら今のうちにだぞ、と。
「マー君」
「……なんですか、テレサさん。今更謝ったってーー」
「夕飯までには帰ってきてね」
ママか!
「見つけるまで、何日でも俺は帰りません!」
そう言い捨てて、飼い犬バウの捜索を始めた。
それから、3日徹夜で探したが、バウは見つからなかった。
あきらめて、帰ったら、すでにバウは3人に捕まえられていた。
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