探し物
半殺しにされたカラカラさんを、テレサさんが急いで治癒魔法をかけて、なんとか蘇生に成功した。
「……はっ! わ、私は……今、亡き母と父が……」
「ははっ……た、大変だったんですよ。急に倒れるから」
言えない。ギルド員の狂戦士に実質殺されていたことなんて、口が裂けても言えない。
「そ、そんなことより犬ですよね。絵もありますし、全力で探してみせます」
「そうですか! それは、助かります。ワンワンワン」
……コボルトも、こんな人(もといこんな犬)ばかりじゃなかったと思うが。
「あの……カンカンさん、一つだけ質問いいですか?」
おずおずと、レイが口を開く。
「はい、なんでしょうか?」
「生きたまま……じゃなきゃダメですか?」
「ダ、ダメに決まってるでしょう!?」
「……はい……頑張ります」
不安。もはや、不安通り越して、失敗の確信しかない。
「くれぐれも、私の可愛い息子です。無傷で頼みますよ! まあ、息子と言えど、本当に血が繋がっているわけではありませんがね! ワンワンワン、ワンワンワン」
「……レイ、抑えろよ」
「はい……なんとか……」
狂戦士美少女は、確実に、限界近い。
「無論、報酬は弾ませて頂きます。これぐらいでどうでしょうか?」
「こ、こんなにですか!?」
200ガルド。まさに、1か月分の食費、家賃が賄える額だ。
「自慢ではありませんが、私は、このあたりで結構な資産家でしてね。公募クエストですと、どうしても時間がかかってしまうし、他のギルドも、予約で埋まってしまっている状況です。とにかく、一刻も早くバウを見つけてください」
「わかりました! この依頼、絶対に成功させてみせます」
個人クエストは、このような人脈作りだと言っていい。このクエストだけじゃなく、彼のような富豪と今後のつながりを持つことは、今後のギルド運営に大きな見通しが立つ。彼がここに来たことは、まさしく天祐だ。
「ワンワンワン、頼みましたよ」
「はい。で、早速ですが、どういう状況でいなくなったんですか?」
「はい。実はこうなんです。バウと私が使用人に散歩している時に、私の縄が切れてしまったんです。で、仕方なく、バウの縄を借りて、散歩を続けたところ――」
ちょいちょいちょいちょい――――――!?
「あの……バウさんの縄を借りたというのは……」
どういう状況!? 全然見えてこないんですけど!?
「ふっ……舐めないで頂きたい。私はバウの主人ですよ? 私の縄が切れてしまったんですから、飼い犬である彼は、私に縄を献上する義務がある! どんなに彼を溺愛していると言っても、序列があるのです! そして、最終的に、私は優先的に縄を手に入れ、縄を外されたバウはどこかへ行ってしまったというわけです」
「「「……」」」
「もちろん、我々も、全力で手を尽くしました……いや、お手をしました。犬だけに、犬だけに、ね! ワンワンワン、ワンワンワンワン――」
本日2回目、レイが、半殺しにした。
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