依頼人


 カチャカチャ……


「あっあの……マー君?」


 オロオロするテレサさんを尻目に……首吊り台完成っと。


「よいっしょ……」


「だめーーーーー! マー君早まらないでーーー!」


「死なせてくれーーーー! 止めないでくれーーーー!」


「ど、どうしたと言うの!? マー君、マスターベーションはごく一般的な行為でなんら恥じることはないのよ? ママを全然オカズに使ってもーー「死なせてくれーーー! 頼むーーー!」


「ちょっと、落ち着きなさいよ、マギ。私も別に気にしてないよ」


 ニーナが腕を組みながら、ため息をつく。


「だっ……だってお前もレイもーー「ちょっと胸ジロジロ見ないでよ」


 ...


「やっぱり死なせてくれーーー!」


 このクソ女に変態扱いされたーーーー! こんな屈辱もう死ぬしかないーーーー! ちなみに、お前に性的な魅力感じたの初期2日だけだからなぁー!


 そんな風にワチャワチャしている時に、ドアが開いた。


「あの……カクカクと言います。仕事を頼みたいんですけど」


 獣人。犬の頭をしたコバルト族の男が訪ねてきた。


「あら、お仕事ですか? さぁさぁ、こちらへ」


 テレサさんは、死にたがっている俺をひとまず置いておいて、接客を開始し始めた。


「飼っている犬探しをして欲しいんです」


 コバルトの依頼人は話す。


 自分も犬みたいなもんなのに、犬飼ってんのかよ……とは、口が裂けても言えない。


「ふーん。犬が犬飼ってんのね」


「こ、こらニーナ!」


 口に出すなアホアル厨女。


 しかし、そんな無礼千万な物言いにも気分を害することなく、依頼人のカクカクさんは大げさに笑いだす。


「ワンワンワンワン。その犬ジョーク、最高ですな、ワンワンワンワンワンワン」


「「……」」


 ぶ、文化の違いだろうか。笑いどころが、ぜんぜんわからない。


「冗談は、これぐらいにして。バウという、私の溺愛するペットがいなくなってしまったのです。ちょうど散歩に行って目を離してしまった時に、まぁ、私は鼻の方が利くんですがね……犬だけに……ワンワンワンワンワンワン、ワンワンワンワンワンワン」


「「……」」


「マギ……殺していい?」


 レイがいつの間にか隣にいて、非常に物騒なことを言っている。


「ダメだよ、依頼人なんだから」


 依頼人じゃなくてもダメだけど。


「私、治せますけど」


 テレサさん……そう言う問題じゃありません。


「バウは私の家族と言っても、過言ではありません。これは、以前、仮装パーティーで書いた家族の記念絵画なんですが……」


 そう言って依頼人のカクカクさんは1枚の絵を見せる。


 カクカクさんが首輪をつけて、四つん這いになって、犬が上手に立っている姿。


「ワンワンワンワン、面白いでしょう? 立場を逆転させて見たんです。犬の生活も、たまにはいいもんですよ、ワンワンワンワンワンワン」

















 結局、レイが、半殺しにした。




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