一瞬、なにが起こっていたのかわからなかった。なぜ俺の机にエロ本が置かれているのか。


 なぜ、俺の、机に、エロ本が、置かれて、いるのか。


「あっ、勝手に掃除させていただきました。ごめんなさいね」


「……え、ええ。別にいいんですよ。アハ、アハハハハハハ」


「よかった。じゃあ、早く降りてきてくださいね」


 何事もなかったかのように、階段を降りていくテレサさん。


 これは、一体、何を意味しているのだろうか。


 俺に配慮して、なにも言わないのか。しかし、ならばなぜ隠したままにしておいてくれないのか。わからない……わからない……


 階段を降りると、その美味しそうな匂いに釣られて、ニーナとレイがすでに食卓についていた。


「じゃあ、みんな、いただきましょうか」


 朗らかな笑顔を持って。テレサさんの号令と共に、ご飯を食べる。


 モグモグ。


 モグモグ。


「あの……マー君。一ついいですか?」


「は、はい。なんでしょうか?」


「マスターベーションのことなんですが……」


 ブフ―――――――ッ!?


「な、ななななな」


「隠さなくても結構です。むしろ、今後は隠さずにして頂きたいんです」


 な、なにを言っているんだこの人は。


「恥ずかしがることではないんです。独身男性は、ほとんどの方が行っている行為なんですから。むしろ、あなたがマスターベーションを行うことによって、性欲を晴らし、犯罪を起こす可能性が低くなるのですから、世の中にとってもいい行為だと私は考えているんですよ」


 ニッコリ。


「……」


 ニーナとレイはキョトンとしながら、話を聞いている……正直、1秒でも早く、自害したい状況では、ある。


「しかし、一つだけ感心できないことがありました。『月間プレイボーイ 6月号~こ、こんな女戦士を酔わせて、ど、どうするつもりだ編』『月間プレイボーイ 3月号~大人し系戦士を、ヒーヒー言わせる方法論編』『月間プレイボーイ 3月号~聖母シスターをより白く汚すには編』『月間プレイ――」


 は、はわわわわっ……な、なんで俺の保有しているエロ本のタイトルを。


「マー君。私は、全然いいの。マー君の性欲処理のはけ口にされても、全然構わない。むしろ、私に女性としての魅力を感じてくれているとしたら誇らしいわ。ママ、凄く誇らしい」


 マ……ママ!?


「でもね。中には、そうじゃない女性もいるわけだから、そこのところは、配慮してマスターベーションをして欲しいの。この本の購入日、ニーナちゃんとレイちゃんがこのギルドに入ってきた時期でしょう?」


 ……もう、いっそのこと、殺してくれないでしょうか。


「あの……テレサ。話が見えないんだけど。いったい、なんの話をしているの?」


 ニーナとレイが不思議そうな顔をしてこっちを見てくる。


 やめろ……そんな純真な瞳で、汚れた俺を見ないでくれ。


「そっか……ニーナちゃんも、レイちゃんも、キチンとした性教育を受けたことがないのね。特に、ニーナちゃんは危険よ。そんなに酔っ払って、マー君のように性欲を発散できない狼のような輩に、その美しい身体を慰みものにされるかもしれない。これから、私がキチンとした性教育をーー」


「あ、あの。俺、ちょっとトイレに行ってきます」


ちょっとゲロ吐いてきます。


「ミーナちゃん、レイちゃん。まずは、男性がするマスターベーションからーー」


……もはや、完全に俺のことは目に入らず、テレサさんは熱い性教育を2人に熱弁し始めた」


...


15分後、昨日の夜飯と今日の朝食を強烈なストレスで全て出し終え、戻ってくると、2人の視線が明らかに変わっていた。


「あっ、マー君。ちょうど、2人にも説明し終えたから。さあ、これで楽しく朝食を食べられるわね」


「……」


「……」


「……」



め、めちゃくちゃ気まずい。


「あ、あの……マギ、私全然大丈夫だから」


レイがおずおずと答える。


……嬉しいことを言ってくれる。


「……ありがとーー「やぁーーーーーーー!触らないで!」


!?


「あっ……ごめ……ま……私……」


タッタッタッ。


「思春期って難しい年頃よねぇ……」

















神は、死んだ。

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