職種


 町の西地区にある教会。神官によって、職種を変更し、別の道を探すことが可能だ。


【職種】

戦士⇒踊り子


【変更理由】

お酒が好きだから


「……ふざけてるんですか?」


 神官が俺に問いかける。


「残念ながら、本気のようです」


 ギルド長は職種を変える時には同伴しなければいけない決まりである。そして、申告においても、その役目を請け負わなくてはいけない。


「失礼ながら、この方の適性としては、戦士、武闘家のランクがSSSです。ソードマスター、格闘王にもなれるほどの器を持っています」


 職種にはそれぞれ称号というものが存在し、その二つともその道の頂である。そこまで極めることのできる才能は史上10人ほどもおらず、ソードマスター、格闘王の二つを極めることができる者は現在のところ、存在していない。


「だ、そうだぞ?」


「ねえ、神官さん。その聖杯に入ってるのってワイン?」


「どうやら、このアル厨女には未練はないようです」


 もう、こんな奴は、どうでもいいです。


「で、では……汝……」


 云々かんぬん。


「これで、あたなは踊り子として生涯を迎えることになります」


「やったぁー!」


 なにが嬉しいのやら。


「ちなみに、この子はどうでしょうか?」


 そう言って、レイを見せる。


 むしろ、こっちが本命だと言っていい。


「う、ううむ……特質職ですか……私レベルではとても……それに、恐らく悪魔神官でないとできないと思います」


「やっぱり……そうですか」


 ネクロマンサーなどの闇の部類に関する職種は悪魔神官でないと変更ができない。しかも、かなりのレベルでないと、このような特殊職は難しいとされる。そもそも悪魔神官でもレアなのに。


 トボトボと、『運命の道』に戻ると、すでに扉は開いていた。


「おっ、マギさん。お帰りなさい」


「リ、リドラー! 戻ってきたのか?」


 リドラー=ラングレー。優秀な武闘家であり、我がギルドの稼ぎ頭である。こいつが稼いでくれていなかったら、半年前に、ニーナの酒代で潰れていたことであろう。


「エヘヘ……おみやげー」


「ニ、ニニニーナッ! もちろんだよ」


 そう言いながらいそいそと地酒を用意する。


 唯一の欠点とすれば、リドラーが、このアル厨女にゾッコンであることだろうか。趣味は、ニーナに酒を飲ませること。なんなら、結婚して一生酒を飲ませ続けて欲しい所だが、なぜか断られ続けている。


「リドラー、早速だが、仕事を頼みたい」


 そう言って、クエストを見せる。


「Dランクですか。まったく問題ないですよ」


 な、なんて好青年。さっき、クエストをこなしてきたばかりで、凄く疲れているだろうに。


「私も……行きたい」


 レイが背中から俺の裾を引っ張る。


「う、ううむ。でも、条件は『生きたまま』だし」


「殺さず……できるもん」


 そ、そんな可愛く物騒な事言われても。


「マギさん、この子は?」


「ああ、新人のレイ=ヴェアトリクスだ。可愛がってやってくれ」


「そうか、久しぶりの仲間ですね。ようこそ、『運命の小道』へ」


 ナデナデ。


 レイはほんのり頬を赤らめて嬉しそうだ。


「一緒に行くかい?」


「ちょ……リドラー!?」


 その子、ヤバいんですけど。


「心配ないですよ。僕がしっかりとフォローしますから。ねっ、レイ。いいよね?」


 コクリ。


 や、や(殺)る気満々。


「マギさん。決まりました。今回は、この二人で行ってきます」


「ヒック……じゃあ、あたしも行くー」


 遠足かこの酔っぱらい女が!


「ええっ!? も、も、も、もちろんだよ」


 嬉しそうに十回ほど頷いて了承するリドラー。


「本当に大丈夫か?」


 こいつらと一緒だと、嫌な予感しかしないんだが。


「マギさん、彼女たちは僕が責任を持って守りますから」


 ドンと胸を張って、これ見よがしにアル厨女にアピールする好青年。


 むしろ、一人は、守ってほしくないのと、どちらかと言うと、ターゲットを守って欲しいというのは俺の切なる願いだ。


「じゃあ、お前ら。くれぐれもリドラーの邪魔をするんじゃないぞ」


「「はーい」」


 し、心配。





 













 結論から言うと、ターゲットはドグチャってなり、リドラーは半殺しで入院した。




 

 




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