第10話 嘘の若獅子の夢は紡がれる③
「なんで僕がこんな村を救わなければならないんですか?命令が抽象的すぎですよ。やれというのであればやらざるおえませんがね。僕が救いたかったのはこの村の弱者だけですよ。」
確かに村を救えなんて抽象的すぎてわからんわな。だがなお前がやろうとしたことは結果的に救うことになるだよどんな形であれな。
「具体的な内容は考えてあるから安心しろ。それよりも腹減っただろこれでも食っとけ。」
俺は左手にリンゴジュース、右手に菓子パンを出現させる。俺の空間魔術である。
「なんだかんだ言ってもシンドウさんは魔術師なんですね。ありがとうございます。」
魔術師ねぇ~そんな大層なものじゃないんだけどね。
「俺の空間魔術はそうだな個室トイレ一個分くらいだな。服とか少し荷物入れられるくらいか。」
「いやいや空間魔術は難しいと聞きますよ。使えるだけで十分凄いんじゃないですか。」
こいつは分かってないなここまでできるようにするのに俺がどれだけ大変で大切なものを失ってきただろうか。
「俺の空間魔術は半日放置すると自動的にこの世のどこかにランダム出現するって言ってもか?...かつて俺はこの魔術で幾度となく試したさ。血の涙を流したこともあった。これほど便利なものはないと思ったからな。そして初めは1時間もすればどこかにいってしまう欠陥品を半日まで伸ばしたんだよ。」
俺は本当にこの魔術だけはどうしても欲しかった。だからこそ努力したんだ。実験したんだ。
「そうですよね..魔術は幾度となく繰り返し。膨大な公式の意味を読み解き、覚えることに加え精神鍛錬が最も必要とされると教わりました。やはり才能や努力は必要ですよね。」
「あぁそうだ。やはりしっかり学んでいるな。偉いぞヤマタケ。俺は勉強の一切を行うこと自体が面倒でな根本なる公式一つだけ覚え、ひたすら繰り返した!俺の素敵コレクションであるエロ本を一冊づつ犠牲にし、絶対なくしてなるものかと精神語りかけ続け3週間でこの限界点まで辿りついた。100冊以上は失ったな。いつか取り戻すさ。」
悲しい事件だった。俺はどうしても会得したいが暗記する気がないと、かつてユイに相談したところ。自分の大切なものを掛けろと言われたのだ。そうだよななんの覚悟もなく何かを手に入れることはできん。
「...シンドウさんは凄いのか、凄くないのか本当によく分からなくなりますね。」
◇
30分程雑談をしながら食事を終わらせる。
「ごちそうさまと。ヤマタケ明日から一週間お前の予定空白状態だから明日の7時にはあの小屋にいろ命令な。」
俺はさらりと友人とどこかに出かけようくらいの気持ちで話した。今日はもう遅いし行動は明日からだ。
「あの爺さんから買ったということですか時間を?シンドウさんは金持ちなんですか?」
「そんなわけないだろ。金なんていつも火の車状態だ。基本あればあるだけ使うわ。あの爺さんには確かに金は渡したが、大部分はお前を好きにボコれる環境作ってやるから、その後一週間あいつを貸せって言ったんだよ。拷問して吐かせたいことがあるって俺が笑顔で言ったら喜んで了承してくれたぞ。」
爺さんほんと執念深いというか根に持つタイプだよな。ああいうタイプにはなりたくないね。
「人生で一番後悔する一週間になりそうだな僕....」
◇
明朝8時30分
「では作戦を決行しようじゃないか!」
「おそいよ!しようかじゃないか!じゃないよ。シンドウさんが朝7時って言ったんでしょ!」
いやこちらに来て初めて宿に泊まったんだが。俺枕が変わると寝つきが悪くなるタイプなんだよな。疲れもピークでぐっすり寝てしまった。アラーム機能付きの時計くらい用意しとけよ!俺がおばちゃんに何時に起こす?と聞かれて、起こさなくて大丈夫ですと答えたんだがな。ユイ以外のやつに朝だよ起きなさいとか言われたくない。ユイ成分なくなりすぎて末期になりそう。
「ヤマタケはツッコミ力が+1上がったと。日々の成長を見守る親の気持ちになるってこのことだよ。」
「用がないなら。俺は出るからな!」
ヤマタケがまたキレた。今度は牛乳を買ってきてやろう。
さて出かけるとな。やはりなにかしらのコミュニティーが存在するのかな。
「用はあるヤマタケお前この村で好きな子いるか。俺か?俺はもちろんユイだ。ちょっと今別件があっていないが、俺いつかユイと結婚するんだ。」
「会話のチョイスが中学生かよ!しかも聞いてねーよあんたの話なんて!惚気けたいだけなのか!しかも死亡フラグだし。...はぁはぁ..こんなに会話で疲れるの初めてだよ」
昔と変わらずそこらへんは日本と変わらないんだな。やはり隣接する世界だからこそ概念は似るのだろう。地球にいたころを思い出したときなぜ言葉が通じてたのだろうと思ったんだよな
「ヤマタケ好きな子の名前を言え!これは命令だ!」
「最悪だよあんた人の皮を被った悪魔だろ。...
「うわ~男のテレ顔とかだれ得だよ。キモいなマジでやめてくれよ。」
「最悪だよあんた人の皮を被った悪魔だろ。よくもまぁ今まで後ろから刺されず生き延びているもんだ!絶対友達いないだろ!」
こいつも同じ返答をする自動式..以下略
まぁ聞きたいことは本当にこれであるわけだ。こいつは確かにそこそこ頭が回る。だからこそ自分だけ助かろうと考えればこんな状況にはならずに済んだはずなのだ。
おそらく過去も現在も捨てられない
「んじゃミッシーに会いにいくか。案内しろ!そしてこれはプレゼントだ」
俺は大きめな動物用の首輪を差し出す。
「頼むから勘弁してくれよ!..仕方ないから案内はするよ。...この首輪は何ですか。とても嫌な予感しかしないんだけど。」
「さぁ四つん這いになりこの首輪を付け、俺をミッシーのとこまで運べ。」
俺は何もいやがらせでやっているわけではない。こいつがもしかしたらユイのパンツを覗いてたり、あまつさえユイの膝枕を受けたことを根に持っているわけではない。
「さぁどんなシューが観られるか楽しみだな。わくわくするぜ!」
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