第9話 嘘の若獅子の夢は紡がれる②
「最近の若い者は口が悪くていかんのう~。これで後の方の報酬は頂いてええんじゃろうな?」
俺はこの爺さんと取引をした。もちろん金でだ。この村には昔財産を少し隠しておいた。
おそらく金策に始め苦労するだろうと考えるのは当然のことだ。金を渡し電報の使用方法を教えてもらったからこそスムーズに使えた。この爺さんのものを使用したからだ。そしてこのゲームの参加に関しても報酬の話をすると食いついてきた。
店で買い物をする時も俺の財布で俺の金で払う予定だったから、本当に詐欺師のような真似する気はなかったんだよな...。
「俺は約束を守る男だ、これが報酬だ、さらに上乗せしてある。そしてこの村にいる間の俺の名前はロウチだ。その意味は分かるな。」
俺は約束の報酬に加えロウチとしてこの村に滞在することを伝えるその分だ。
「はいよ、このクソ坊主に腹いせできたことじゃし、さらには報酬まで貰ったんじゃ。あんたはワシの孫ロウチであり、ワシは何もここで聞かなかった。それでいいんじゃろ。」
この爺さんやはり猫被ってやがったな。馬鹿なセリフ吐いてる時は大抵嘘をついていたからな。
「それでいい。あんたに頼みたいことがあるんだが、この町のそうだな身分証明を発行できるところに顔は利くか?」
「流石にそれは無理じゃな、たとえできたとしてもバレたらワシの人生が終わる。これは報酬云々の話ではないわい」
やはりそうか。まぁいい少し面倒が増えるが問題ない。
「わかった。では帰っていいぞ。ちなみに言っとくが余計なことをしたら、老い先短いあんたの寿命を減らすことになるからな。欲は働かせ過ぎないことだ。」
「ご忠告感謝しておくわい。じゃあの。」
本当にこの世界は欺瞞に満ちているな。あんな規模の畑を持っており、そして護衛かしらんが人を雇っていやがらせに行くことができる。なによりも防犯カメラの届かない遠くの畑での暴力行為だ。捕まるわけないよな。そんなことができる人間が権力を振り回すだけしか能がないクズなわけないじゃないか。
「さて、ひどくやられてるな。どれだけあの爺さん鬱憤が溜まっていたのやら。」
まぁ半日以上におよび暴力を振るわれたらそうなるわな。それでも一対一のフェアな戦いの場になるようにしたのにこれだからな。ヤマタケは正直期待ハズレもいいとこだ。
「仕方ない苦手なんだが回復魔術を使ってやるか。」
俺は基本魔術は嫌いだから覚えていない。覚えようと学園で試しはしたが、理論的でないというか。
..正直面倒だった。ガリ勉のユイなんかは好きなのかもしれんが俺には無理だ。
◇
30分経過
「まぁそこそこ回復したんじゃないか。おいヤマタケ感謝しろよ俺の慈悲によ!」
「誰が感謝するか!死ぬかと思ったわ。人取り押さえて無理やり回復魔術を使用ってどういうことだよ!しかも回復箇所が激痛とともに回復するとか。わざとやってるだろ!」
そう俺の回復魔術は欠陥品だ。癒しではなく苦痛をもって直す。だから基本はユイにやってもらう。はぁ~会いたいな。膝枕してもらいながら癒されたい。
「わめくな負け犬が、話かけるならワンって言ってから話しやがれ。」
「....」
そうだよな。例え相手が動けないと思い込んでいたとは言え、決闘で老人一人に勝てないのだから。敗因はその植え付けられた負け犬根性だろうよ。
「あれだけ大口吐いて、俺頭いいんだよみたいなドヤ顔して負けてりゃ世話ないよなぁ~。女の子の前で強がりすら見せていたな。しかも俺が指定したルールを見抜くことすらできず。まだまだあるがどうする聞かせて欲しいかな。ヤマタケ、お前じゃ気づけない真実をよぉ!」
「........くそが!あークソだ。いくら落ちこぼれようが、それはまわりのやつが生まれ持った魔の力や体格に恵まれるてるとかの差だったはずだ。頭の回転の速さは絶対僕の方が上だった。年上にだって負けなかった。...だが結果僕は落ちた。誰かがはめたんだ僕を!あーこれじゃ敗北しか残らない!ちきしょーが許さない絶対許さない。こんなに惨めなのは生まれて初めてだ。あんたは結局なにがしたかったんだよ!僕を見て笑いたかっただけか!それなら大成功だろうよ!」
あららヤマタケが壊れちまったかな。..だが逆だよヤマタケ。これならお前を配下にはしてやれるよ。
「そうだな。今のお前の表情最高だぜ。制約通り命令に従ってもらうぜ。」
俺は勝負には勝っていた、爺さんの顔面を殴れなかった時点でな。まぁ早めのリタイヤをオススメしておいて、助けを呼ぼうが空間から出さなかったのは悪いとは思っているよ。
「これ以上あんたが俺に何を求めるんだよ。価値がないことが分かったんじゃないのかよ。」
価値ね。大分自分を見つめ直すことができているようだな。
「それじゃ命令を下してやるよ。もう一度この村を救うために動け!」
こいつがあの爺さんを捕まえてでもしたかったことをもう一度させてやる。
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