第4話 嘘で始まり終わる世界③

 今俺たちは馬小屋なのか、少し大きい犬小屋なのか判断つかないレベルのボロイ建物の中にいる。


「ここがヤマタケの家なのか?人が住む場所じゃないよなここ。」


 まず雨漏り、風化、壊れた窓、開きっぱなしのドア...まだまだあるがきりがない。

 スラム街のガキですら、もっと環境のいいとこ住んでんじゃないかこれ。


「ちょっとシンドウさん!あたなには気を遣うという単語が頭の辞書から抜けてるんじゃないですかね!」


 いやいやユイよ、下手気な優しさは返って劣等感を抱いてるやつに対しては傷つける結果になるもんなんだぞ。見てみろよヤマタケの顔が引きつってるじゃねーか。


「あの..喧嘩はやめてください。よそ者を招き入れたことがばれると僕もそうですが、ユイねぇ達も危ないんですよ。」


 そうだな。この村の状況を考えるとこいつは罰を受けるだろうし、俺たちに限っては身分すら証明できないよそ者だ。捕まれば良くて牢獄送り、最悪一生奴隷扱いだろうな。


「そんなことは言われんでも分かっている。少なくとも俺とユイはどうとでもできる。危ないのはヤマタケお前だけだ。だから問題ないさ。安心して寛いでていいぜ。」


「ちょっとシンドウさん!あなたには情けをかけるという単語が頭の辞書から抜けてるんじゃないですかね!」


 いやいやユイよ、以下略

 こいつ同じ返答しかしねぇーな。固定返答するだけの自動式人形サービスかよ。


「..キィ..あんたらもう出てってくれよ!助けてくれた恩があるからこそ下手にでてやってんのに言いたい放題言いやがって。帝国機関に突き出すぞ!」


 ヤマタケがキレた。いい表情になったじゃねーか。

 そしてこちらの世界でいう帝国機関警察はまだ存在してたんだな。


「いやいやあんまりにもお前が辛気臭い顔してたもんでな、からかってただけだよ。」


「だからシンドウさんそれは..」

「うるさいもう口を開かなくていい、隅でおとなしくしていろ。話が進まん。」


「横暴な!...いいですよ~だ。私を省いたこと後悔させてやるんだから。」


 ユイは隅で体育座りしながら、ぶつぶつ言っている。どうせ頼まれても回復させてやらないんだからとでも考えているのだろう。これから始まるショーは回復の必要性はないから問題ない。むしろあったら白けてしまう。


「いいんですかほっといてしまって。僕としては隅にいられるだけでも迷惑なのですが。」


 やばいこれはやばい。面白すぎるわ。ユイの背中がさらに小さく見えるぜ。


「いいんだよあれで、さて本題といこうじゃないか。」


 俺は地球で培った営業スマイルをこの世界でも披露する。この技術はとても有効だ。地球にいて一番の収穫はこれだと思っている。どんな状況でもスマイルを忘れないこと。


「ヤマタケ、お前畑で倒れる前に言ったよな。許さないからな必ず必ず..と。必ずどうするんだ?」


「なんですか唐突にどうでも...」


「はぁ~。どうでもいいとでも言いたいのかよゴミが!だからお前は使い捨てのゴミのようにあの爺様達に捨てられるんだよぉ!」


「あなたに何がわかるというのですか!この村では..」


「この村では爺さん達クズヤロウに逆らえない。なぜかというとこの村は爺さん達が圧倒的に多く高齢化社会が築かれており数という面でも不利。そして若い大人は少ない。出兵に駆り出されているとかか。そしてお前のようなガキがそこそこいるのは落ちこぼれて落ちてきたのだろう。この村に!帝国機関の命令で!底辺までよぉ!」


「あなたは何で知ってるんですか。帝国機関そっち側の人間なんですか?」


 そんなこと推測に決まってんだろ。まずなんでこんな村でこんな扱いを受けてるのに言語能力に問題ないレベルに至っている。それはしっかり教育機関で学んでいるからだ。そして足蹴にした時は把握したが筋力と持久力は元・々・あったんだ。なぜ今は衰えているのかは、かつてこいつはこの村ではない別の場所で真っ当な教育を受け、さらに食事も得られていたのだろう。


 まだ全貌は把握できんが、能力によって人の配置が変わるシステムなのだろう。だからできそこないのゴミ置き場がここなのだろう。そして爺さん達に逆らえないのには、逆らったが最後底辺以上の烙印である死が待っているってところか。本当によくできたシステムじゃないか、これ以上ないほどの競争心の煽り方であり、これなら必死に上を目指さなければいけない。


「いいや。全く関係ないぞ。だから安心しろ。さぁ話せ必ずどうしたいんだよ。ためらう必要はねぇぞ!」


 俺はどんどん悪魔のような表情になりつつ語りかける。流石にこれを営業スマイルで言うのは無理だ。


「いや言わない!あんたが帝国機関の人間でないとなぜ言える。証拠を見せて見ろよ!正直言おう帝国機関の人間が何か企み僕を陥れようとしている線が濃厚だと思ってるよ!」


「!..ククっ..やばい最高だよお前は。傑作だよ。すまんかったな、これは俺が謝るとこだな。滅多にいしないからありがたく思えよ。証拠を見せてやる!少し待ってろ。」


 俺は踵を返し小屋から出ていく。ピエロとなるのは一体誰になるんだろうな


 ◇


 ...シンドウが去ってから1時間後


「ふぉご..ふぉご..」


 猿ぐつわで口をふさがれ。手足を縛られたジロキチお爺様サンドバックが床に放り投げられる。


「シンドウさん!なにやってんですか!さっきのクズじゃないですか!」


 自然と毒吐くなユイは。


「ヤマタケこれが証拠だ!これでお前も俺達もこいつに顔を覚えられていまった。共犯者だな。」


「ふざけるな!なんてことしてくれたんだ!なにより、どうやって捕・ま・え・て・き・た・ん・だ・よ・。」


 そんなことは簡単さ。あの三人の中で一番金にがめつい上におつむが足りないこいつをまず選ぶ、こいつがおそらく懸念しているのは警備隊の目だろう。確かに厄介であり防犯カメラすらあった。慎重なやつならまず死角には入らんし、危ないと思えば警備隊を呼ぶだろう。だが呼ぶと不利益になるような嘘の商談を持ちかければいい。後は死角に引き入れるだけだ。

 まぁ正直考えた中で最も面白くなりそうだったので、こういう結果にしたのだ。だから楽しませて貰おうじゃないか。


「大丈夫だ。この場所に捕えられていることは気づかれていない。それはこの場所まで誰にもバレずに運んでいる時点でお前が一番分かっているだろう。」


「なぜそう思うんですか?俺はあんたの言うとおり落ちこぼれですよ。学の少ないガキです。」


「だってお前この爺さんを過去に捕まえて人質にでもしたことがあるんじゃないか?それかよほど恨まれているかだ。」


「納得せんだろうが、説明をしてやるよ。まず俺達が会ったのは村の近くの畑だ、村に向かっていく最中一番初めに見たのがこの畑だった。そして村の状況確認のため偵察していた。要は村から一番離れた場所にお前はいたんだよ。次にこのジジィはこう話した「ガキを相手にしてる暇はない」と、確かに「ワシの畑」と言うからには本人が行くのはどおりだろうが3人もいたんだぞ、どうかんがえてもいらんだろ。お前の仕事の確認をするためにはな。だって逆らえないのだから。しかもお前は一人だ。到底一人じゃ4エーカーもの畑があるのに耕せるわけないだろ。」


「結論を言おう。お前はこの爺さんに恨まれるような何かをして、こいつの畑を耕すという名目で罰もといいやがらせを受けていたんだ。そして最後死にかけのお前は確かに反逆心を持った目勝ちを見据えた目で言った必ず必ず..俺なり言い方をすれば仕返ししてやる成功させてやるとな。」


 俺はこういう活き活きとした目がたまらなく好きだ。なんたってこれ以上ないと思わせるほどの興奮を味わえるのだから!味わい尽くさなければもったいない。


「シンドウさんは優しいですね。違いますよ僕は「必ず必ずコロシテヤル」と言うつもりでしたよ。推測通り過去に僕はこのクズを捕まえました。シンドウさんのいうとおり権力だけ振りかざすだけしか能がないクズでしたので捕まえるのは楽でしたよ。計画通りにはいきませんでしたけどね。」


 一歩でもミスが出ると総崩れとなるギャンブルであり、掛けでもある当然負けることはあるわな。俺もそうだったからな。


「シンドウさん。証拠は十分です。これを僕にくれるということでいいんですよね?」


「ふぉご...ふぉご...ぐふ」


 腹蹴りをヤマタケは食らわせている。だがこれはダメだな。


「何いってんだやらんぞ俺が捕まえてきたんだ。だが条件次第では譲ってやるよ。」


「条件ですか..なんでしょうか?僕が賭けられるものあるんですか?」


「あぁ条件はゲームに参加することだ。お前が負けたら、俺の部下しもべとなってもらう。」

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