第3話 嘘で始まり終わる世界②
俺が見ているのは本当に村と言えるのか?
そうだとしたら地球はやはり平和であったと言えるだろう。
俺達は人の気配がした場所に移動し村の近くの畑に来ている。偵察も兼ねて一応念のため身を隠している。
「確かに限界集落は少ないのかもしれん。なんせ限界集落とは若いやつもろくにおらんし人が少なく老人が多い高齢化社会ってやつだ。だがこれは違うよな。」
「ええ…そうね。老人は多いけれど。老人が支配している村を限界集落と定義するのはどうかしらね。」
そう俺達が見ているのは若いやつら、ガキが奴隷のようにこき使われ、強いては一般の人間より戦闘力が強いはずのゴブリンまでもが奴隷扱いだ。俺の常識では老人が勝てる確率は低いはずだ。
「こりゃガキィ!サボるでないわい!今晩も飯抜きにされたいかのかい!」
「…すみませんハウロお婆様、そしてジロキチお爺様、ロウチお爺様。精一杯奉仕させて頂きます。どうかお恵みを与えて下さい。」
「はん!薄汚ないガキが飯だけは一丁前に欲しがりよって。4エーカー耕せたら考えてやる。頑張るのじゃぞぉ」
「そりゃええの〜それだけ耕せばワシの畑も安泰じゃ!そしたらあまりものくらいは分けてやるぞい!」
そういいながらガキはこうべを垂れる。それを足蹴にするジロキチお爺様
「そんなぁ許して下さい!…無理だよ。うぅ…。」
「まーた泣きべそかいておる!こりゃ今晩も飯抜きじゃな。気合いが足らんのう最近のガキは。ゆくぞこんなガキを相手にしてる暇はないからのう」
そして爺さん達は飽きたのか足蹴りをやめ去っていく。
「許せませんねあのお爺さん達。あんなやせ細ってる子供に!殺してきますね。」
ユイが突っ走ろうとするところに足を引っ掛け転ばせる。顔面から落ちたな。まぁいい
「何するんですかシンドウさん!鉄拳制裁じゃ生温いでしょ!この所業!」
確かに胸糞悪いわな、俺も許せないと思ってるさ。しかし…
「バカか…。確かに許せねぇはなぁ〜あんなガキ助ける価値すらねぇよ」
誰かに恵みを、誰かにこうべを垂れないと明日のこともどうにもできないやつなぞゴミ同然だ。
「シンドウさん。言っていいことと悪いことがありますよ。分かってますか。今私は殺意を抱いていますからね。たとえ乱咲さんであっても…」
「⁉︎」
音が聞こえた小さくはあったが確かに。
こりゃ思ったほどゴミではなかったか。
「あのクソジジイィ!いい気になりやがって!許さないからな必ず必ず……。」
ガキは空腹か、疲労か分からないが力尽きたように倒れた。最後に最高の俺好みの反逆の狼煙を上げて。
「ククッおいユイ!撤回してやんよ、さっきのゴミ発言はよ。ゴミではないこれからは俺のペット配下にしてやるよ!」
これは面白いことになって来たな。さぁて久しぶりに俺に闘志を抱かせたんだ。ただでは死なせんぞ。償って貰おうか。
「ユイ!そのガキを介護してやれ。死なすことは許さん!お前の得意分野だろ。」
「はいわかりました!っふふ。やはりなんだかんだ言っても助けるんですね。シンドウさんは。」
「無駄口を叩く暇があればさっさと治せ!ユイの
そうこの世界が地球より文明レベルが高いと言ったのはこの魔術を開発してしまっている点にもある。
魔術があるから逆に文明レベルは下がるのではないかと俺はこの村に来る途中思ったが、それは全く違うと結論づけた。
なぜなら
人間が魔術を身につけたのは。多種族に打ち勝つためだからだ。戦争はいつの世も技術を発展させる!この世界も例外ではない。地球は人と人とが争い終着点として平和条約を締結した!人と人が争っているレベルはとうに終わっているんだよ。人とは強さの次元の異なる他種族と均衡を保てるくらいこの世界は発展させてしまっているのだから。そりゃ〜娯楽なんて流暢に楽しむ余裕なんてないよな〜おい。
「…ぅう。女神さま?死んだのかな僕は…ゴホォ。はぁはぁ…」
「何能書き垂れてやがんだガキがよぉ。そう簡単に人が死んでたまるか。なによりユイの膝は俺のもんだ。勝手に膝枕されてんじゃねーよ。」
俺は意識のハッキリしてないガキに腹に蹴りを入れてやる。
「怒るとこそこなんですか⁉︎シンドウさん乱暴はやめて下さい。膝枕なら私いつでもして…」
「意識がハッキリしたならまず名前からだ。さっさと言え!」
「ちょっと!さっきから私の扱い雑すぎませんか!話も最後まで聞いてくださいよ!!」
うるさいやつだ。
「はい僕の名前は
俺はまた腹に蹴りを入れつつ、今回はさらに足蹴に扱う。やはり理不尽にこき使われるだけあって筋力と持久力がありそうだ。しかし栄養をとっていないため発揮できていないってところか。
「私、こんな子供にまで気を遣われるなんて……。だから乱暴はやめてくださいよぉシンドウさぁぁん!」
ユイの悲痛な叫びがこだまする。
全くやかましいやつだな。
「おいガキ。ユイをナンパしていいのは俺だけだ。こいつのことはユイ、ユイねぇ、行き遅れねぇーさん。のどれかで呼べ。それ以外を言ったら畑に埋める。肥料になって爺さん達は大喜びだろうがなぁ。」
おぉ目つきが変わったな。相当な怒りを溜めてるに違いない。
「いい目つきになった……あれ空が見え…ぐふぅ…後頭部が痛いな。ユイなにするんだ。ジャーマンスープレックスなんて技どこで覚えたんだよ。」
女の子が出していい技じゃないよな。地球の変な影響受けやがって。
「だ・れ・が!行き遅れですってぇ〜私はまだ16歳ですが何か!」
「いやいや、俺達12年本来取ってるわけじゃないか。確か来月誕生日だよな。29歳か、やったなあと少しでアラサー確定!…やめろやめろ逆エビ固めはやめろ。そしてパンツ覗いたガキ、お前は殺す。」
「ユイねぇ僕は覗いてなんて…ぐへぇ」
ユイはラリアットをガキに食らわす。これは死んだかな?いや泡吹いてるだけか、しぶといガキだな。
「あわわ、ごめんね掛くん。しっかりして〜」
ユイは少年の肩を揺らす。さてこいつの名前は。
「いいや違うぞユイ。こいつの名前はヤマタケだ。そう呼ぶようにしろ。」
俺はフルネームで覚えるのは嫌いなんだ。無駄に長いし覚えづらいからな。だから配下にあだ名を付けている。
「なぜヤマタケなんですか?名前から取ったんですか?」
「まぁ半分はそうだ。だがもう半分はヤマトタケルになれるかどうか試す意味でもある。」
こいつが本当に反逆者となれる器ならばの話だがな。
「?まぁシンドウさんのことだから、またろくでもない結末になるんでしょうね。」
失敬だなこいつは、俺はいつだって真剣にこの世界のために動いているというのに。
「まぁ見てろよ。最高のショーを見せてやるからよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます