城ヶ根との昼飯は騒がしい

 昨日のバイトの疲れが出ているのか、めちゃくちゃ体が重いんですけど。二人分の仕事したのが問題だったのか? どうしよう、学校あるんですけど。

 痛い体を無理矢理たたきおこし、学校に行く準備をする。朝飯を食べる時間がなかったため、食べずに学校に向かった。

 学校につき、いつも通り机にうつ伏せ状態になる。話す相手もいないし、ボーとしているよりはまだましだと思っている。

 何分かして朝のホームルームが始まった。


 「起立、おはようございます」


 「おはよう」


 それから佐倉先生からの連絡が始まった。と言っても、あまり大事な連絡ではなかったため、うつ伏せ状態のままその話を聞いていた。


 一時間目は佐倉先生の授業だったため、寝ることは許されなかった。寝たら絶対殴られるだろうしな。


 「野雫目、この問題わかるか?」


 「わかりません」


 俺は即答してやった。わかってても前に出て書きたくないしな。目立っちゃうのは嫌だからな。


 「即答するとはいい度胸だね。まあいいや、他の人でわかる人いないかな?」


 危なかったー。あの人の目、まじで怖いんですけど。こんなに言葉と表情があってないのは始めてみたわ。

 その後は、順調に授業は進み、なんとか寝ずにすんだ。これでひと安心だな。もう寝ても怒られないぞ。ヒャッホイ何て思っていた時期がありました。寝て怒られない訳がないだろ、普通に考えて。俺はバカなんじゃないか。今日はちゃんと授業を受けることができた。


 昼休み、いつものところで食べようと思い、移動する。今日は弁当じゃなかったため、購買でパンを買ってから、行くか。後、自販機でジュースも買わないとな。何て思いながら購買に向かった。向かう途中、声をかけられた。


 「野雫目先輩ですよね?」


 「人違いだと思いますよ。それじゃ俺はこの辺で」


 面倒だったのでずらかろうと思った俺は、後輩を騙すことにした。


 「私が騙されると思いますか? 先輩のことはわかりますからね」


 「お、おう」


 なにこのこ、俺のこと好きなのか? あり得るわけないか。どうせこの目が特徴的で忘れないだけだろうな。


 「それで、俺になんかようか?」


 「はい! 昨日のバイト、何から何までありがとうございました。緑川さんから全部聞きました。先輩が看病してくれたんですよね?」


 「あの人、言わないでって言ってたのに何で言っちゃうかな」


 「別に隠すことじゃないですよ。本当にありがとうございました」


 「きにすんな。俺がしたくてしたことだしな」


 「それでですね、今から一緒にご飯食べれないかなぁって」


 「えっ? 嫌だけど?」


 「何でですか~? 後輩の頼み聞いてくださいよ~」


 「あのな、城ヶ根が俺と一緒に居てみろ、俺はぼっちで嫌われものだぞ? 城ヶ根みたいな可愛いやつが俺と一緒にいてみろ? お前が嫌われものになるからな?」


 「私が可愛いって。それより、私はそんなこと全然気にしませんよ? それくらいで嫌われるならひとりぼっちでも全然いいです」


 「はぁ、そこまで言うなら一緒に食べようぜ。その前に早くパン買わないとな。時間なくなるし」


 「そうですね。それじゃ私はここで待ってるんで、先輩は早く買ってきてくださいね」


 「城ヶ根はいいのかよ?」


 「私、お弁当持ってきてるんで買わなくても大丈夫ですよ」


 「まじかよ」


 それならなんで購買のところにいるんだ?なにか用があったのか? まあ今はどうでもいいか。早く買っていかないと、まじで食べる時間なくなっちゃうしな。

 パンを無事に買うことができ、城ヶ根のもとに戻った。


 「先輩、遅かったですね。そんなに混んでましたか?」


 「わりと人はいたかな」


 「そうですか。それで、どこで食べます?」


 「俺がいつも一人で食べてるところでいいか?」


 「わかりました。それじゃいきましょう」


 「わりぃ、その前に飲み物買っていいか? 喉乾いてな」


 「いいですよ」


 自販機につき、いつも通りアイスココアを買った。ついでに城ヶ根の飲み物も買うことにした。


 「なぁ城ヶ根、これあげるわ」


 そう言って俺は、さっき買った紅茶を城ヶ根に渡した。


 「わざわざ買わなくてよかったんですよ?そこまで気を使わなくてよかったんですよ?」


 「俺だけ飲むのもなんか嫌だったしな。要らなかったら捨ててくれても構わん」


 「いえ、要らないなんてことは絶対にありえません。買ってくれてありがとうございます!」


 そう言ってニコッと笑う城ヶ根に少しだけ見とれてしまった。

 自販機を後にし、やっとのことで昼飯にありつけることができた。


 「先輩はどうしてあのとき私が具合悪いことわかったんですか?」


 「そりゃいつもより顔が赤かったしな。多分だが俺じゃなくても気づいてたと思うぞ?」


 「そんなにわかりやすかったですか?」

 

 「逆に聞くが、あんな赤くなるような化粧だったら、俺は近づかなかったぞ?」


 「まじですか」


 「まじです」


 その後はご飯を食べることに集中し、話さなくなった。食べ終わり少しひと息ついていると、


 「改めて言いますね。私のこと看病してくれてありがとうございました。また、私の仕事も全部やってくれてありがとうございました」


 そう言って城ヶ根は頭を下げた。そんな姿を見てられない俺は、すぐに顔をあげるようにいった。


 「だからそんなにお礼を言わなくていいって。さっきも言ったが、俺がしたくてしただけだしな」


 そう言ったと同時に昼休みが終わるチャイムがなった。騒がしい昼飯も悪くないと思った俺だった。


 

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