妹との通話は楽しい
俺は綺羅星先輩の後を追った。綺羅星先輩と出掛けている途中に国見先輩を見つけたからだ。
「今日は、なんか用事があるって言ってたのに......」
唐突にそう言われた言葉に、俺は驚いた。まさか最初に国見先輩を誘っていたとはな。そんで断られたから俺が道連れにされたわけか。ほんと、国見先輩も少しは考えてほしいものだ。
「綺羅星先輩、少し落ち着いてください。多分なにか用事があるだけですよ。しかも、一人で居るところをみると、勉強とかじゃないんですか?」
「た、確かに。流石だよ! 後輩くん!」
やっと元気がでたか。流石にずっと落ち込んでいられると困るんだよな。なんか、俺が悪いことしたみたいに見られるじゃん。それだけは勘弁だ。
「なら、そろそろ帰りませんか? 国見先輩には帰ってから何してたのか聞けばいいだけですし」
「それもそうだね。なら、もう帰ろっか」
やっとだ。やっと帰れる。今日はいつにもまして疲れたからな。早く帰って寝たい。いや、妹に電話しなければならなかったか。忘れると、怒られるしな。
「後輩くん。今日はありがとね。とーても楽しかったよ」
玄関でそう言われニカッと笑った綺羅星先輩は、いつもの感じじゃなかった。そんな笑顔を見て、こっちまでついついお礼を言ってしまう。
「こっちこそ、まぁ、つまらなくはなかったっすよ」
「なんじゃね、なんじゃね?照れてるのかなぁ?可愛いなぁ」
「ちょっ、からかわないでくださいよ。なんか、恥ずかしいじゃないっすか」
「私、お風呂に入ってくる」
そうっすか。俺の話は無視ですか。なんだろう、悲しい。まあ、いいか。俺は俺でしたいことあったしな。先ずは妹に電話しないとな。
俺は妹の携帯に電話をかけた。何回か音がなった後、すぐに妹は電話にでた。
「お兄ちゃん、今日も電話してくるなんて関心関心」
「当たり前だろ!」
忘れたら怖いものが待っているしな。
「それで、お兄ちゃん、今日はどんな感じだったの?」
「今日か? 今日は寮の先輩に無理矢理に買い物に付き合わされてよ。マジ大変だったわ」
「そっかそっか。それでその人、女の人?」
「そうだな」
「お兄ちゃん、どうせ鼻の下伸ばしてたんでしょ!」
何故かきれていらっしゃる。俺、なにか不味いこと言ったかな。
「伸ばしてるわけないでしょ。そもそも嫌々連れていかれたんだからな」
「そういうことにしとく。それでお兄ちゃんには彼女ができたのかな?」
「俺にか?できるわけないだろ。そもそも誰がこんな人見知りな奴と付き合ってくれるんだよ」
「だよね!」
我が妹よ。なぜ嬉しそうに言っているんですかね。そんなに俺に彼女ができないのが嬉しいんですかね。
「俺はいいから、彩菜に彼氏は出来ないのか?」
「私? 私はまだ作る気がないよ。たまに告白とかされるんだけどね」
「おい、まじでか。そいつの名前教えてくれるか? ちょっとそいつらボコりに行ってくる」
「そんなことしちゃダメだよ、お兄ちゃん」
「冗談に決まってるだろ。彩菜の人生は彩菜が決めることだしな。俺は見守るだけだよ」
「ありがとね、お兄ちゃん」
「まあ、彩菜が告白されるってのは当然のことだしな。こんなに可愛いんだから、男たちも惚れるに決まってる」
「ちょっ、お兄ちゃん。可愛いなんて冗談でも言っちゃダメだよ」
「俺は事実を言っているだけだぞ」
「もう、お兄ちゃんたらぁ。そんな嬉しいこと言われても、何もできないからね?」
「そんなん別にいいぞ? 彩菜はいてくれるだけで十分な存在なんだよ」
「ありがと! それじゃあお兄ちゃん、また電話しようね! 今度は帰ってきてよね!」
「悪い。当分は帰れないと思う」
「なんで?」
「いや、まあいろいろあんだよ。こっちもさ。とにかく、また今度な」
「ちょっ......」
返事が返ってくる前に俺は電話の通話ボタンを押した。
ふう、危なかったぜ。もう少しで俺がバイトしてるってこと言いそうになっちゃったぜ。
「おやすみ、彩菜」
ここにいるはずもない妹に挨拶をして、俺は眠りについた。
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