綺羅星先輩と遊びに行くのは何かと疲れる

 バイトから帰った俺は、風呂に入ってから寝ることにした。今日もくたくただった俺は、早急に寝たかった。と言っても、寝るところはないんだけどね! 言ってて悲しくなってきた。


 「野雫目くん、お帰りなさい!」


 久しぶりに水瀬が話してくれた。俺はその事がとても嬉しかった。


 「ただいま」


 一通り話した後、急に水瀬が真剣な顔つきになった。

 

 「晴香のことどうするの? 私から説明しておこうか?」


 「いや、咲久野には言わなくていい。そもそも、俺から離れさせるのが目的だったしな」


 「でも......」


 水瀬は悲しそうな顔をしていた。


 「そんな心配すんなって。前も言ったが、俺がしたくてしたことだ。だから水瀬は気にすんな」


 「......わかった」


 渋々ながらも納得してくれたため、俺は安堵した。


 「そういうことで、風呂にはいって来るわ」


 「わかった」


 そう言って俺は風呂に向かう。


 「はぁ、今日も疲れたな。まぁ、明日はバイトもないし、ゆっくり寝てるかな。あっ、寝る場所なかったわ」


 なんだよ、明日も休まる気がしないんだけど。明日のことは明日なんとかなんだろ、と思い、身体を洗い俺は風呂からでた。風呂からでた俺は今日も今日とてリビングで寝る。


 ーー朝になったが、俺は起こされるまで起きなかった。誰だよ、気持ちよく寝てたのに、起こしたやつは。許さんぞ!なんか身体が重いななどと思っていたら、俺の上に綺羅星先輩が乗っていた。


 「後輩くん! 朝だぞ! 起きろー!!」


 「わかりました、わかりましたから重いんで俺の上から降りてもらえませんか?」


 「だが断る!」


 「頭おかしいだろ!」


 思わずため口で言ってしまった。これは不味いなと思ったが時すでに遅し。


 「今ため口だったなー!! もーいいもん。私怒っちゃったもん」


 「謝りますから、そこどいてください。俺、起き上がれません」


 それより、お尻が背中にあたり柔らかい感触が伝わってくるため、正直やばい。早急にどいてもらわないと。


 「むぅ、そういうことならどいてあげるんだもーん!」


 そう言って俺の上から降りてくれた。


 「ありがとうございます」


 そう言い、俺は起き上がった。


 「それで、俺になんか用があったんですか?」


 「今日は後輩くんと遊ぶんだもーん!」


 「俺、遊ぶ約束なんてしてませんよね? それより、いつから後輩くんって呼び方に変わったんですか?」


 「うんーとねぇ......なんでだろ? 呼びやすいからこれでいいかなって思ったんだよ!」


 「自分でわかってないんですか」


 ほんとこの人と話してると疲れるな。誰かが起きてきた。


 「もう起きてたのか。野雫目、早起きだな。それじゃ俺は遊びに行ってくるわ」


 待ってよ国見先輩。貴方だけが頼みの綱なんですから。そんなことも虚しく、国見先輩は遊びに行ってしまった。


 「後輩くん! 私たちもこれから遊びに行こうよ!」


 「嫌ですよ。そもそもめんどいですし」


 「三十秒で支度してきたまえ。遅れてきたら許さんぞ!」


 俺の話は左から右に抜けているのか、まったく聞いていなかった。それどころか綺羅星先輩は準備して降りてきていた。早すぎだろ。人間業じゃないだろ。


 「後輩くん。まだ着替えてなかったのかい? 早く着替えてきてくれないかな」


 「へいへい、わかりましたよ」


 渋々着替えることにした。この先輩、何いっても通じないしな。


 「準備はいいかい、後輩くん! いざ出陣じゃ!」


 「どこに行くつもりですか! ていうか、出陣とか、意味不明なんですけど」


 「気にしちゃダメだぞ後輩くん!」


 「はぁ、わかりました。なら、行きますか」


 こうして、俺と綺羅星先輩は遊びに行くのであった。

 



 「それで、綺羅星先輩、これからどこに行くんですか?」


 「知らん!」


 「ちょっ、知らんてどういうことですか。行く場所とか決めてなかったんですか?」


 「そんなの決めてるわけないもーん! 思い付いたところに行くんだもーん!」


 「はぁ、帰りたい」


 ほんとどうしてくれようか。これじゃ出掛ける必要なかったんじゃね?なんなら今から帰りたいんですけど。


 「後輩くん! あそこに行ってみようよ!」


 まぁ、そんなことが許されるわけないよな。わかってたよ。

 「どこですか? って走らないでくださいよ」


 思いの外、綺羅星先輩は足が速く、追い付くのがやっとだった。


 「ちょっ、先輩、走るの速すぎですよ」


 「後輩くん! そんなことじゃだめだぞ! 私なんて後、ギアを三段階上げることができるんだからね!」


 「やばすぎですよ。ていうか、人間業じゃないですよ」


 「甘い、甘いぞ後輩くん! これくらいで根を上げてちゃ、まだまだだよ!」


 「いやいや、先輩しかできないことですよ。普通の人じゃまず無理ですよ」


 「気合いがあればなんでもできる! 気合いだー!」


 「はいはい、そうですか」


 はぁ、この先輩が話していることにはついていけない。周りからも変な目で見られちゃってるし。はは、最悪だ。


 「あれ、恭介じゃん。何してるんだろ?」


 「女の人といますね。デートとかじゃないんですか」


 リア充爆発しないかなぁ。あっ、国見先輩は爆発しちゃダメでしたね、はい。


  「私、恭介の後追う!」


 そう言って綺羅星先輩は尾行する形で国見先輩の後を追った。


 「待ってください。俺も行きます」


 俺も綺羅星先輩の後を追った。なんだが楽しそうだなと思ったことは綺羅星先輩には内緒である。

 

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