佐久間の部屋で寝泊まり
俺は城ヶ根を家まで送ってから、寮に戻った。バイトまではとても楽しかったのだが、帰ってくるとどうしても緊張してしまう。そんなんじゃダメだって事ぐらいわかってはいるが、わかっていても緊張してしまう。かれこれ一週間くらい咲久野とは話してない。今更仲直りしたいと言っても、許してもらえるかわからない。というか、確実に許してもらえないだろう。
一つよかったとしたら、水瀬と仲直りできた事ぐらいだ。まさか水瀬から話しかけてくるとは思っていなかったがな。
玄関で俺はぶつぶつ独り言を言っていた。
「そんなところでなにぶつぶつ言っているんだ、まったく」
トイレに行くために降りてきた佐久間に言われたて気づいた。なんで俺、こんなとこで独り言を言ってたんだよ。俺自身、何故に玄関で独り言を言っていたのか不思議でならなかった。普通に入れよ、俺。
「ちょっと考えごとをしてたんだよ」
「そんなことはどうでもいいが、顔が気持ち悪いぞ?」
ずばっと言われた。そりゃぁまあ、気持ち悪いかもしれんが、はっきり言わないでくれませんかね。精神的ダメージが半端ないんですけど。
「ちょっ、おま、そんなはっきり言わなくていいじゃんか」
「そんなの冗談に決まってるだろ。そう本気にするな。少しだけそう思ったのは事実だがな」
最後のやつは俺に聞こえないように言ったつもりだろうけど、ばっちり聞こえてたからね。なにそれ、悲しい。
「そんなとこにいないで、早く来いよ」
「お、おう」
確かに、ずっと玄関に居るってのもどうかと思うしな。かといって自分の部屋には戻れないし、どうしようか。
「僕は部屋に戻るからな」
佐久間はそう言って部屋に戻ろうとする。俺はそれを止めた。
「なら、俺も佐久間の部屋に言ってもいいか?そんで俺を佐久間の部屋で寝かせてくれないか?」
「そんなのダメに決まってるじゃないか。僕はホモじゃないんでな。というか、まさか野雫目がホモだったとわな。これから、近づかないようにするわ」
「違うから。俺、ホモじゃないから。ちょっと色々事情があって、今自分の部屋にいけないんだよ」
「まぁ、そうだろうな。大方、あいつらのことだろ?」
「ああ、まあそんなところだ」
「やれやれ、今回だけだからな」
「ほんとにいいのか?サンキューな」
なんだかんだいって、佐久間はいい奴だな。最初は話しづらい奴だとばかり思っていたんだよな、俺。コミュ力ゼロの俺に言われても、しょうがないか。元々、俺が話せないだけだったしな。 あれ、それって俺が悪いんじゃね?
俺は佐久間の部屋に向かった。やはりと言ったところだろう、色々アニメに関係するものがあった。当然だろう、アニメ製作に携わっている人なんだからな。これくらいあっても当然だ。
「佐久間の部屋ってアニメ関係の本や物が沢山あるんだな」
「当たり前だ。アニメ関係の仕事は全般的になんでもしてるんだしな。これくらいでもまだ足りない方だぞ」
「そうなのか。それで、新作はいつ放送されるんだ?」
「それはまだ後だろうな。そもそも脚本がまだ出来上がってないみたいだしな。その辺は僕はノータッチなのでな」
「そうだったのか。俺、わりと楽しみにしてるんだよね」
「そうか。なら、前作ったやつも見てくれ」
「それならもう見たぞ。流石国見先輩だなって思ったよ」
「流石のできだっただろ?」
どや顔で言ってきたため、少し腹がたった。だが、それくらい面白かったため何も言えなかった。
「それより、野雫目はやってみたいこととかないのか?」
「俺か?俺自信よくわかんないんだよな。前は専業主婦一筋だったんだが、最近皆の働いてる姿を見て、俺も何かをやりたいって思ったんだよ。だから今はこうしてバイトしてるんだ」
「なるほどな」
「最近、小説家になりたいって思い始めたんだよな。そう思ったのは佐久間や先輩たちのお陰なんだけどな」
「なら、一度小説を書いてこい。そしたら僕が見てやるぞ」
「それは助かる」
そんな会話をしていたが、俺は途端に眠くなったため早速床に布団をしき、一言声をかけて寝ることにした。
「おやすみ」
「おやすみ」
俺はそう言って眠りについた。
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