後輩の城ヶ根はあざとい?!

 バイト先での俺は、少し浮かれていた。


 「今日の野雫目くん、気持ち悪い」


 「ちょっ、緑川さん、気持ち悪いはないでしょ」


 「なら、にやにやするのやめなさい」


 「そんなににやにやしてましたか?」


 「してたよ」


 まじでか。そんなににやにやしてたのか。まあ確かに、俺がにやにやしてたら気持ち悪いよな。一度自分の笑っている顔を鏡で見て見たけど、ばけもんだったからな。そりゃぁ、そう言われても仕方ないか。


 「そろそろ、仕事に戻ろうよ。最初は皿洗いからね」


 「わかりました。終わったら、どうすればいいですか?」


 「終わったら一度私のところにきて。その時に次の指示をだすからさ」


 「はい、わかりました」


 緑川さんに言われた通り、皿洗いをする。今日は割りと少ないため、すぐに終わると思っている俺がいた。だが、次から次と洗う皿が増えていき、終わる気配がなかった。

 誰だよ、すぐ終わるとか言ったやつ。俺が注意しにいってくるか。......はい、俺でしたね。あんなこと言った自分を殴りたい。

 増えていく皿に溜め息がでてしまう。なんでこんなに多いんだよ!そんなことを思っていたが、皿が減るわけじゃないため、俺はせっせと手を動かした。やっと皿洗いが終わり、俺は緑川さんのところに行った。だが緑川さんは忙しいのか、俺の存在に気付いてくれない。なので、邪魔しちゃ悪いなと思い、俺は休憩室に行った。


 「すみません、貴方が野雫目さんですか?」


 休憩室にはいると、いきなりそう言われた。


 「あぁ、そうだが」


 「やっぱりですか!私、野雫目先輩と同じ学校に通っている、城ヶ根朱里(しろがねあかり)って言います。よろしくお願いしますね。」


 「よろしく。城ヶ根の方がバイト先では俺より先輩になるから、いろいろと教えてくれると助かる」


 「はい!わからないことはなんでも聞いてくださいね!」


 「おう、その時は頼むわ」


 「はい!」


 そう言って城ヶ根は休憩に戻った。容姿は髪型がセミロングで、亜麻色(あまいろ)であった。体型も太りすぎず、痩せすぎず、調度いい感じだ。世間一般ではかなり可愛い方だと思う。見た感じリア充だろうなぁ、って感じのやつだ。

 そんなことを思っていると、緑川さんがきた。


 「こんなとこにたんだ。ごめんね、忙しくって指示が後になっちゃって」


 「いえ、大丈夫ですよ。それより、次はなにしたらいいんですか?」


 「なら、次は城ヶ根から仕事内容聞いて」


 「はぁ、わかりました」


 伝え終わった緑川さんは、そのまま休憩室を後にする。


 「それじゃ城ヶ根、仕事内容を教えてくれ」


 「なら、厨房に行くよ!」


 「わかった」


 「後ね、私のことは朱里って呼んでほしいな」


 「それだけは勘弁してくれ」


 名前呼びとか恥ずかしすぎるだろ。しかも女子の名前だぞ?俺には絶対に無理だな。


 「ぶー、呼んでくれてもいいじゃないですかぁ」


 あざといな。現実でぶーなんて言うの人、初めて見たぞ。


 「......あざとい」


 「なっ?!あざといってなんですか。初めてそんなこと言われましたよ」


 まじでか。他の人は言ってなかったのか。そりゃぁこんな可愛いと、男は騙されるわな。だが、俺は騙されない。


 「そんなことより、仕事しようぜ」


 俺は止まっていた手を動かす。


 「ちょっ、いきなり手を動かさないでくださいよ。ていうか、まだ仕事内容言ってませんよね?」


 「そういや、そうだったな。んで、なにをすればいいんだ?っていっても厨房で出来ることといったら料理作るくらいだろうけど」


 「まあ、その通りですよ。因みに先輩は料理できるんですか?」


 「まあ、人並みにはできるぞ?家事全般はなんでもできるしな」


 「そうなんですか。なら、なにも教えることがないですね。注文来たらちゃちゃっと作っちゃってください」


 「了解」


 「もしなにか困ったら私に言ってください。その時は手伝いますから」


 「あぁ、ありがとな」


 「いえ、手伝う代わりに今度なにかしてもらうんで」


 「いやいや、なぜ勝手になにかしてもらおうと思ってるの?俺はなにもしてやらないからな」


 「ダメです!もう決めたことなんで、約束は守ってもらいますよ」


 いつ約束したんだよ。約束というより強制だろ。


 「注文入ります」


 「わかりました」


 俺たちは話していたことをやめ、注文が入ったものを作り始めた。その後も何回か料理を作った。バイトの終わる時間になったため、俺は上がることにし、着替えをした。


 「先輩、一緒に帰りませんか。ていうか、送ってってください」


 「はぁ、仕方ないな」


 確かに、暗い夜道を女子一人で帰らせるのもどうかと思うしな。そう思いながら帰る俺たちであった。

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