楽しかった一日も終わりを向かえていた
「お兄ちゃん、早く歩いてよ」
ほらほら、と手を振ってくる。それでも、これだけ人が入れば動きづらいのは当たり前で、急ぎたくても急げない。
「そんなこと言われたって、人が多すぎて行けないんだよ」
「もう、まったく。ならさ、手を繋いじゃえばいいんだよ!」
この妹は何を言うかと思えば、手を繋ごう、だって。無理無理無理、こんな人が多いところで手なんか繋いじゃったら、恥ずかしくて死んじゃう。そのなかにクラスメイトなんかいたら人生の終わりだ。なんとしてでもそれは阻止しなくては。
「流石にここで手を繋ぐのは不味いんじゃないか、彩菜。こんなところを友達にみられても彩菜が困るだろ?」
彩菜が傷つかないように、やんわりと断る。
「全然困んないよ?私の友達には、お兄ちゃんのこと沢山話してるしね!」
妹よ。もしかして俺の悪口なんか言ってたりしないよね?俺がいても普通通りだけど、本当はいなくて清々してるとかって思ってないよね?思ってたら悲しい。そうだったとしたら、立ち直れないまである。
目に見えて落ち込んでいる俺をみて、
「大丈夫だよ。お兄ちゃんが思っているようなことは言ってないよ!寧ろかっこいいってことを皆に言ってるんだよ!」
「そ、そうか」
多分、彩菜の友達、俺の顔をみて幻滅するんだろうな。確かにお世辞にもかっこいいとはいえないしな。
それでも、変なこと言われてなくて安心した。
「ほら、お兄ちゃん。行くよ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
俺は彩菜に手を握られ、そのまま連行された。
ーー最初は服屋さんにきた。メンズ用のところもあったが、今回は彩菜の服をみにきたため、関係ない。
「これとこれだったらどっちがいい?」
水色のワンピースとピンク色のマウンテンパーカーっていうやつを持ってきた。
「どっちかっていうと、水色のワンピースかな」
「なら、ピンクのパーカーの方を買うね」
俺が選んだやつじゃない方を買うみたいだった。それ、買わないんなら、なんで俺に聞いたんだよ。無駄だったでしょ。
「いやぁー、いいもの買えたね!さあ、次に行こう!」
そう言って彩菜は歩きだす、!俺もそれにならい彩菜についていく。彩菜が止まったと思ったら、そこは下着コーナーだった。
「お兄ちゃん、ここによってもいい?」
「別に構わんが、俺はなかに入らないで、ここで待ってるからな」
「だめ、ちゃんと中に入ってよ」
「いや、それでもなぁ。男の俺が入ってたらおかしいだろ?」
「そんなことないよ!大丈夫だから、一緒にきてよ!」
ここで話していても、他の人に迷惑がかかると思った俺は、嫌々中に入った。
「そういや、なんで下着コーナーに寄ったんだ?下着必要なくね?」
「私、今までスポブラだったんだけど、なんか最近胸が窮屈になってきたんだよね。だからこれをきに、ブラジャーにしてみようかなって思って」
「なるほどな。尚更一人で選んだ方が良かったんじゃないか?」
「最初はお兄ちゃんに選んで欲しかったんだよね!」
なんて可愛いことを言っていたが、下着をお兄ちゃんに選んでほしいとか、将来が心配だ。他の人にこんなこと言うようになったら、お兄ちゃん、悲しい。
そんなことを思っていると、彩菜が二つブラジャーを持ってきていた。
「この水色のブラジャーと、猫柄のブラジャー、どっちがいい?」
「猫柄の方かな」
「わかった。これ、買ってくるね」
「ちょっと待て、ほらよ。さっき服買ってお金余りないだろ?だからこれで買ってこい」
そう言って俺は、お金を渡す。
「ありがとね、お兄ちゃん!!」
満面の笑みで俺にお礼を言ってくれた。それだけでお金を渡した甲斐があったってもんだ。
買い物も一段落したため、家に帰ることにした。あまり遅くなるのも駄目だしな。しかも、寮に戻らないといけないしな。
ーー俺たちは手を握ったままで、家に帰った。家に着いた俺は、自分の部屋に行った。この二日間、とても楽しかった。そのなかでも、妹に会えたことが一番嬉しかったかな。明日からまた寮生活に戻る。あいつらのこともどうにかしないとな。そんなことを思っていた。
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