デクジニーランドでの休日

 中に入ったはいいものの、人が多すぎてはぐれそうだし、気を付けないとな。それよりも、人酔いしそうだな、こりゃ。


 「ねえねえ、お兄ちゃん!全部の乗り物に乗ろうね!」


 「流石に全部乗るのは時間的に無理だろ。しかも、こんなに人いれば乗れるのも限られてくるだろ」


 「うぅ、そうだけどさぁ。全部乗る気で周ろうってことだよ」


 「そういうことな。なら、時間ないし、さっさと行くぞ」


 「その、さ、手繋いじゃ駄目かな?」


 上目遣いで俺をみてくる。そもそも、妹の頼みごとには今日は聞くって話だから、勿論一発オーケーだけどな。


 「別にいいぞ」


 そう言って俺は彩菜の手を握る。


 「えへへ。ありがとね、お兄ちゃん!」


 少し照れながらお礼を言われた。俺はお礼を言われたため、照れていた。なんか恥ずかしいな、これ。


 「まぁなんだ、早く行くぞ」


 彩菜の手を引きながら歩いた。


 「ちょ、ちょっと待ってよお兄ちゃん!」


 そう言いながらも、彩菜は嬉しそうな顔をしていた。


 「そういや、最初何に乗るんだ?」


 「うんーとね、スプレッシュマウンテンに乗ろうよ」


 「了解」


 俺たちはスプレッシュマウンテンがあるところに向かった。


 「今から、一時間待ちになります」


 従業員の人がそう言っていたのを聞き逃さなかった俺は、彩菜に確認をとる。


 「今から一時間待ちらしいけど、他のに行くか?」


 「ううん、そのくらいなら待とうよ」


 「わかった。なら待つか」


 「うん!」


 待つことを決めた俺たちは、暇になったため、彩菜と話すことにした。


 「なぁ、この次はどこに行くんだ?」


 「次は、スパース・マウンテンに乗ろうよ!あそこならあんまり待たなくても乗れるってこの前友達から聞いたよ!」


 「なら、先にそっち行った方が良かったんじゃないか?」


 「うっ、それを言われるとどうしようもないけど、先にこっちに乗りたかったんだもん」


 「まぁ、彩菜がいいっていうならどっちでもいいんだがな。それに今日は彩菜のお願いを聞くって言ったしな」


 「ありがとね、お兄ちゃん!」


 彩菜の手を握る力が少し強くなっていた。どうしたんだろうかと思ったがただ単に嬉しくて力が入っただけだったみたいだ。

 そういや俺たち、ずっと手を握ってるんだよな。やべぇよ、今頃になって、恥ずかしくなってきた。俺、妹と手を繋いでるんだよな。まぁ、可愛いからよしとしよう。彩菜をみていると、癒されるからな。俺がそんなことを考えていることは彩菜は知らない。というか知っていたら問題だわ。俺の心を読み取っちゃうことになるしな。


 「次の方ー、どうぞー!」


 長かった待ち時間が終わり、俺たちの番になった。周りには人が乗っていたが、論彩菜は俺の隣に座る。


 「お兄ちゃん、楽しみだね。少しどきどきしてきたよ!」


 何回か乗ったことがあるはずなのに、初めて乗った人みたいにはしゃいでいた。そんな姿をみて、ほっこりしていた俺であった。


 ーー最初はゆっくり動きだし、途中までは全然怖くない。その為話している人たちもいた。一方俺らは無言で乗っていた。別段怖くはなかったのだが、なぜか話をしなかった。どんどんと進んでいき、最後のところにきた。乗っているやつが上に上がっていく。後は落ちるだけだ。その瞬間まで後何秒かだった。


 「きゃーー!!」


 彩菜の可愛らしい声が聞こえたと思った瞬間、水をかぶっていた。なんだよ、最悪じゃねーかよ。水かかるとか、不運だわ。しかも他の人は全然かかってないしよ。


 「楽しかったね!また乗りたいなぁ」


 「時間的に次乗るのは無理だな。また今度来たときに乗ろうぜ」


 「そうだね!また、一緒に行ってくれるんだね」


 「......俺ももう一回乗りたくなったしな」


 「そうやって捻くれないの。それでも、ありがとね!」


 「お、おう」


 絶対に次もくるんだと、心に誓った。


 「そうだ、早くスパースマウンテンに行こうよ!時間なくなるよ!」


 俺の手を引っ張ってくる。


 「ちょっ、ちょっとまってくれ」


 俺たちは急いでスパースマウンテンがあるところに向かった。俺たちは楽しみにしながら移動した。


 「スパースマウンテンって、確か暗くてなにも見えないから怖いんだっけ?」


 「おう、確かそうだったはずだぞ」


 「わぁ、楽しみだなぁ。早く乗りたいよ!」


 彩菜はうきうきしていた。今日はずっと楽しそうにしている彩菜だった。そんな姿をみて、俺も嬉しかった。ここまで楽しんでくれれば、連れてきたかいがあったななどと思っていた。

 そうそくしているえちに、目的の場所についた。


 「ここから、三十分待ちになります」


 従業員の人が『三十分待ち』と書いてある紙をもっていた。


 「今から三十分待ちか。まぁ、さっきのところよりは楽だな」


 「そうだね!きっと三十分なんてあっという間だよ!」


 「おう、そうだな」


 そんな話をしている間に、次々と中に人が入っていく。このペースなら三十分も待たなくても入れるんじゃないかっていうくらい、列が進むのが早かった。

 

 俺たちの出番になり、乗り込む。正直、俺は、こういう系が苦手だ。出来ることなら乗りたくない。彩菜が乗りたいと言ったから、乗っているだけだ。


 「お兄ちゃん、手を重ねてていいかな?」


 「えっ、おま、なに言ってーー」


 言い切る前に動き出してしまった。動いてからのことは余り覚えていない。ただ、彩菜が手を重ねていたってことは覚えている。そんなことして危なくねぇのか、と思ったが、大丈夫だったからよしとしよう。


 「楽しかったね、お兄ちゃん!」


 満面の笑みで俺に言ってくる。やっぱ可愛いよな、俺の妹は。


 「おう、楽しかったな」


 そんな会話をして歩いていると、クラスメイトのやつに遭遇してしまった。

 最悪だ。このタイミングで会うかよ、普通。やっぱ俺運ねぇなこりゃ。そんなことを思っていた。

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