体育祭終了

 午後の部最初は二人三脚だった。咲久野と水瀬が参加していた。まぁ、あの二人息があってるし、大丈夫だろ。なんて思っている時期がありました、はい。全然噛み合ってませんね、大丈夫だろうか。転んでばっかりで全然前に進めていないぞ、あいつら。まったく、咲久野はどうでもいいが、水瀬の方が心配だ。

 何回も倒れるうちに、コツを掴んだのか、段々とあうようになっていた。だが時すでに遅しといった感じで、もうほとんどの組はゴールしていた。因みに俺たちのクラスの奴等もゴールしている。いわゆる最下位ってやつだが、ゴールできただけでよしとしよう。俺は水瀬が心配で駆け寄った。


 「大丈夫か?転んでばっかだったから、膝とか擦りむいたりしてないか?少し見せてくれ」


 どうも、水瀬は妹ににた感じがあるのか、いつも妹にしている扱いをしてしまう。


 「大丈夫ですよ。ただ転んだだけですから」


 「それでもだ。一度見せてくれ」


 見せてもらうと、所々に擦り傷があった。見てるこっちも痛くなってくる感じがする。


 「治療するから、ちょっと救急箱取ってくる」


 「いいですよ、このくらい。なんともありませんから」


 「一応、消毒位はさせてくれ」


 「わかりました」


 会話を終了させ、救急箱を取りに行く。

 俺が救急箱を取りにいっている間、咲久野は自分が心配されなかったことを悲しく思っていた。なぜ私が心配されないの?などと思っている咲久野であった。


 「ねぇ、なんで私心配されなかったの?」


 「さあ、私に聞かれてもわからないよ」


 「だよねだよね。まぁ、しょうがないよね、こういうときもあるよ」


 咲久野と水瀬は話ながら俺が戻ってくるのを待っていた。


 ーー俺は救急箱を持って水瀬の方に向かった。そろそろ、次の種目に移るみたいだし、早くしないとな。

 

 「水瀬、少し痛いと思うが我慢してくれ」


 俺は水瀬の膝に消毒液を塗った。


 「うっ......」


 水瀬は少し痛かったのか、顔をしかめている。消毒液を塗り終わり、これでよしと思っていると、


 「ねぇ、私も心配してよ!」


 隣にいる咲久野もそう言ってくるが、今はそれどころじゃない。そろそろ、玉入れなのだ。俺の出番が近づいているんだよ。


 「悪い、咲久野は玉入れが終わったあとな。それじゃ、玉入れに行ってくるわ」


 「頑張ってねぇ」


 「野雫目くん、頑張ってください」


 咲久野だけじゃなく、水瀬からも応援された。俺は応援されたことが嬉しかったが、顔にはださなかった。


 ーー入場し、玉入れをする位置にスタンバイしる。ふと俺は、でかい袋を準備してそれに全部玉を入れて投げればいいんじゃないか、と思って提案しようとするも、俺の話を聞いてくれるクラスメイトはいるはずもない。これで勝てるというのに、かなしきかな。

 そんなことを考えていると、始まりのピストルがなった。俺は少し遅れてしまったため、慌てて玉を投げ出す。まぁ、投げてもあんま入らなかったんだがな。俺は自分の投球力がないことにがっかりしていた。

 ーー係りの人が、なかに入っている玉を数えだした。


 「いーち、にーい、さーん、よーん、ごー......さんじゅうはーち、さんじゅうきゅうー、よんじゅー」


 結果的に、負けてしまった。それも最下位だった。本当に申し訳ない。まあ、いいや。もうこれで俺の出る競技はなくなった。なら、寝ててもいいよな。

 俺は木の下に向かった。ここなら誰にも邪魔をせず、寝ることが出来る。終わる頃に起きれば何の問題もないだろ。そんなことを考えながら眠りについた。


 ーー「野雫目くん、野雫目くん、起きて! もう体育祭も終わって閉会式になるよ?」


 水瀬は俺を起こしてくれていた。咲久野もそこにいたみたいだが、起こす気はなかったらしい。


 「おはよう、んじゃ行ってきます」


 「どこに行く気なんですか!」


 水瀬は俺を止めてくれる。そこで意識が覚醒した。もう、他の生徒たちも整列し始めていたため、俺らも急いで並ぶ。咲久野と水瀬はクラスが違うため、クラスの方に戻った。


 「結果発表、優勝、赤組」


 なんだ今年は赤が優勝したのか。まあ、どこが優勝してもどうでもよかったんだがな。それよりも早く終わらないかなぁ、なんて思っていた。

 その後も、順調に閉会式が進んだ。委員長の、


 「これで体育祭を終了させていただきます。お疲れさまでした」


 やっと終わったみたいだ。今日は疲れたから、早く寮に戻って寝よう、そうしよう。と思っていた俺であった。

 

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