一人での夕食

 それぞれのクラスのテントに戻る。戻る途中、クラスメイトの話が聞こえた。


 「負けたの、野雫目のせいだよな」


 「あいつさえいなければ勝てたのにな」


 「まじそれな。あーほんとうぜぇわ」


 「顔見るだけで吐き気もんだぜ」


 などと言っているのが聞こえた。大抵、負けたことは誰かのせいにするってのが人だ。いじめをするやつらは大体そんな感じだ。なにかあればすぐにあいつのせいだ! って言うからたちが悪い。


 その後、彼らは打ち上げの話をし始めていた。  打ち上げ、それはリア充たちが集まり、ウェイウェイするものである。反省会とか言ってるが、ご飯を食べに行ったり、ワイワイ騒ぐだけだ。俺も去年誘われて行ったんだが、話をふられても一言も喋れず、雰囲気を悪くしてしまっていた。それから、打ち上げがあっても俺は誘われることがない。まぁ、当然だわな。喋んない奴誘ってもつまんないしな。

 だから打ち上げなんて俺には関係ないものだ。そうと決まれば早く寮に帰ろう、そうしよう。ぜ、全然悲しくないんだからね。

 途中、咲久野に声をかけられた。


 「私、打ち上げに誘われてるから、打ち上げに行くね!梨花と一緒に帰るね!」


 「了解、俺は先に戻ってるからな」


 「うん!」


 ほとんどの人が打ち上げに参加するため、帰る人の方が少ない。ていうか、俺だけじゃね?帰ってるの。まぁ、いいや。早く寮に戻ってラノベの続きを読もう。


 「ただいま戻りました」


 そう言って俺は寮に入る。誰もいなかったため、先輩たちも打ち上げに参加しているみたいだ。なので寮のなかはシーンとしていた。まぁそんな事気にしてられない。早く部屋に戻ってラノベの続きだ。

 ーー随分と時間がたっていたみたいで、もう夕方になっていた。そろそろ、夜飯食べるか。今夜は一人でパーティーと洒落こみますかね。なんて一人虚しく言っている俺であった。

 料理も作り、一人でいただきますをして食べる。


 「はは、一人で食べる飯久しぶりだな。最近は咲久野や先輩たちと食べてたから気づかなかったわ。こんなに一人で食べることが悲しいってことに」


 俺は一人で弱音を吐いていた。何がぼっちだ。これでぼっちを名乗っちゃいけない。もっとしっかりするんだ、俺。いつも通りになっただけじゃないか。そうこうしているうちに、ご飯を食べ終わっていた。まだ誰も帰ってこない。そろそろ帰ってきてもおかしくない時間帯なのだが、時間を忘れて皆盛り上がっているのだろう。

 俺は風呂に入り部屋に戻った。また、ラノベの続きを読んでいた。一時間位たった後だろうか。玄関が開き、誰かが帰ってきたみたいだった。

 

 「ただいま! 光太」


 「ただいまです!野雫目くん!」


 咲久野と水瀬が帰ってきたみたいだった。


 「水瀬、お帰り!」


 俺はそう言って水瀬の頭を撫でる。そうすると水瀬は嬉しそうな顔で撫でられている。

 咲久野も撫でられたかったのか、羨ましそうにこちらを見ている。それでも俺は、水瀬を撫でるのをやめなかった。


 「私も撫でてほしいな」


 「また今度な」


 「う......わかった......」


 咲久野は、見るからに落ち込んでいた。そんな咲久野をみて、俺は咲久野の頭を撫でてやる。咲久野は嬉しそうにしていた。


 「水瀬、お願いがあるんだが聞いてくれるか?」


 「私が出来る範囲なら、いいですよ」


 「ありがとな。それでお願いなんだが、咲久野と風呂に入ってくれないか?あいつ、一人じゃ入れないからさ」


 「それなら全然いいですよ。というか、前までどうやって入ってたんですか?」


 「俺と入ってた」


 「えっ! そうだったんですか! なら、咲久野の裸、見たってことですか?」


 めちゃくちゃ驚いていた。まあそりゃそうだろ。男と女が一緒に入るなんて、普通あり得ないんだからな。


 「まあな。と言っても、目隠ししながらだったから、あまり見てないけどな」


 「そういう問題じゃないと思うんですが。まあ一緒にお風呂に入ってきますね」


 「おう、助かるわ!まじサンキューな」


 「どういたしまして」


 俺と水瀬は楽しそうに話していた。


 「それともう一つ、今日泊まっていってくれないか?理由はさっきと同じで、咲久野と一緒に寝てほしいんだ」


 「泊まるっていっても、着替えとか持ってきてないですよ?」


 「パジャマとかは咲久野のを貸すしさ」


 「それならまあ、いいですよ。ちょっと待っててくださいね、親に電話します」


 水瀬はそう言って電話をしだす。その頃咲久野は一人突っ立っており、つまんなそうにしていた。


 親と電話していた水瀬は、会話が終わり携帯を閉じた。


 「大丈夫だそうです。なら、私泊まりますね。それで、どこで寝たらいいんですか?」


 「俺の部屋だ。つってもほとんど咲久野がいるし、全く一人部屋になってないんだがな」


 「そうだったんですか。わかりました」


 水瀬が泊まることが決定した瞬間だった。俺は内心喜んでいた。

 

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